つくも神
「ああ、かえってゆっくりと休むといい」
そそくさと制服を脱ぎながら、俺はふと考えた。
武井さんはあの声が平気なのだろうか。おれはもう二度と聞きたくない、あの声。
「武井さんは、平気なんですか。あんなのを聞き続けて」
俺の言葉に、武井さんの笑い方が代わった。
にやり。そう形容するのに相応しい笑みだった。
「おれ、いくつだと思う?」
「60・・・いえ、55?」
静かに、ゆっくりと武井さんは首を振った
「35だよ。やっぱり妖怪とかかわっていると生気をすいとられるのかねえ」
そう言ってケタケタと笑う武井さんに、おれはぞっとして
失礼します、もそこそこに警備室を飛び出した。