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杜若 あやめ
杜若 あやめ
novelistID. 627
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連鎖

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と言った。私は何も言わずただあいまいに笑って、コートを手から引き抜くと
背中に無数の同じ問いを込めた視線を感じながら、扉を閉めた。

「ビンゴ。だったな」
相棒がそう言って足を止めたのは、託児所を兼ねた教会が完全に見えなくなった場所にある
小さな空き地だった。
さび付いた網のないバスケットゴールが二つ、落書きだらけの壁にはさまれて置かれている。
「どうして分かったんです、彼女があそこに潜んでいるって」
私の問いに相棒は答えず、ポケットからタバコを取り出して火をつけた。
警察署もふくめ今はニューヨークの大部分が禁煙地帯だが、ここは例外らしい。足元にも無数の吸殻がちらばっていた。
「確信があったわけじゃない」
紫煙とともに、相棒はやっと答えを吐き出した。
「有色人種の女が一人だけで潜むなら、ダウンタウンは絶好の場所だろう。それに
本拠地の方は潰してしまったから、持ち金が底をつくのは時間の問題だ。
人間食わなきゃ生きて行けないし、ここは金がなけりゃ何も出来ない場所だからな。
ああいう託児所は常に人手不足だ。経歴なんてでたらめでも、子どもの世話さえ出来れば雇ってくれる
だから一応聞いてみた方がいいと思っただけだ」
「しかし」
私は釈然としない思いで、ポケットから一枚の写真を引っ張り出した。
黒い髪と褐色の肌の若い女性が、ねこ科の猛獣を連想させる鋭い瞳でこちらを睨んでいる。
刑務所でとられた証明写真ですら、十分に美しくみえるのだから、実物はかなりのものだろう。
「テロリストが赤ん坊の世話をするのが信じられないか?」
苦笑する相棒に、私は頷いた。
20をいくつか超えただけの彼女は、100人を超える人間を間接的に殺害した。
全米を又にかけた筋金入りのイスラム系テロリスト集団の中心的メンバー。
「大統領がいくら悪の枢軸と叫んだ国の人間だからって、実際は我々と同じ人間さ
親だって子どもだっているだろう」
そう言ってタバコの灰を落とす相棒の手には、ひきつれた火傷のあとがあった。
私が書物や、映画の中でしか知らない亜熱帯の国のジャングルの中の戦いを
この人は実際に経験していた。
「でも、彼女が最後に起こした爆弾テロで、地下鉄が3両爆破されています
乗っていたのは遠足帰りの幼稚園児たちでした」
テレビは遺体を載せた担架に取りすがって泣き崩れる親の姿を
作品名:連鎖 作家名:杜若 あやめ