小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
杜若 あやめ
杜若 あやめ
novelistID. 627
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

連鎖

INDEX|3ページ/3ページ|

前のページ
 

センセーショナルなナレーションと共に連日報道し続け、
警察の電話は市民からの情報提供と、苦情でパンク状態になった。
そのお陰で我々は彼女たちのアジトを発見。十数名のテロリストに
100人以上の警察官が動員され、本拠地に突撃。激しい銃撃戦の上
テロリストの半数を射殺し、鎮圧した。だが、逮捕者や遺体の中に
彼女の姿だけがなかった。
「彼女の履歴をみたんだが、」
相棒の顔にはほろ苦い表情が浮かんでいた
「1991年の湾岸戦争のさい、両親と弟を失っている。
そして、この間の戦争では夫が出兵し、子どもが地雷を踏んだ」
私は睨みつける彼女から目をそらした。
ハイスクールの生徒だった私は、新聞が伝える隣国に侵略した
非道な独裁者に素直に怒り、テレビに映るゲームのような砲撃の
様子に見入り、戦争孤児たちに胸を痛め、学校で寄付を募った。
ツインタワーに飛行機が突っ込む瞬間まで、私はわが国は世界の警察であるという
政府の言葉に疑いを持ったことはなかった。
「タバコ、私にももらえますかね」
目の前に差し出された缶にはクローバーを加えた鳩の絵が描かれている。
ピース。それを実現したくて、わが国は世界中に軍隊を送っているのではなかったか?
ピースを生み出すはずの行動が、なぜ新たなる憎しみを生み出すのか。
10年ぶりに吸ったタバコの煙は目にしみた。
涙が流れないように空を見上げる。
雲ひとつない、真っ青な空。この空に爆撃機は飛んでいなくても
この国は間違いなく戦争中なのだ。そして、それを皆忘れている。
テレビの中でゲームのように作戦は遂行され、死者は数字として報告される。
敵国の負傷した人々に、かわいそうと泣ける鈍感な我々は
見えない憎しみが降り積もることに、ぎりぎりまで気付かない。
「なんて顔しているんだ」
そう言って肩をたたいた相棒の手にタバコはなく、顔は敏腕な刑事のそれにもどっていた
「これが本当の住所だとは思えんが、一応いってみよう。
相手は凶悪なテロリストだということを忘れるな」
その言葉に、私も頷いてタバコを地面に捨てた。
相棒に後に続いて歩き出しながら、私はポケットの中の銃をにぎりしめる。
シスターが教えてくれた住所は、すぐ目の前に迫っていた
作品名:連鎖 作家名:杜若 あやめ