砂の船
トレーに乗せた。と、その時にコートの袖口が少しめくれ上がり白い手首と、そこにはしる
無数の赤黒い傷跡が見えた。佐々木の手が一瞬とまる。その視線に気付いたのか、
女の子が慌てて手を引っ込めた。
「……そんなことやったって、何の解決にもならないよ」
ぼそりと呟かれた言葉に弾かれたように、女の子は飲み物を掴み取ると足早に店を出て行った。
「またなんかしはったんか?」
店長の声に、佐々木は首を振りながら
「じゃ、あがります」と言って、エプロンを脱いだ。
どうして、もっと俺はもっとましな言い方が出来ないんだろう。と
心の中で呟きながら。