Awtew.2 (e-r) 1
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これで、もう終わりなんだ。
ボクはそう思いながら、初めてのキスの味が残った口に手を当てる。
レモン味なんてロマンティックじゃない、生々しい、彼の血の味。――感じてしまった、キスの味。
なんで、彼は、あそこで、止めたの?
――忘れられない傷をつけてくれたほうが、良かったのに、楽だったのに。
「――――いくじなし」
閉まったドアを、見る。
もう、彼はここに来ない。
これで、良い、はず。そう思っても、泪が白いシーツに落ちていく。
なんで、止まらないんだろう。
あとは、彼を忘れるだけで、元通りになるのに。
なんで、止まらないんだろう。
これで合ってるはずなのに。
なんで、止まらないんだろう。
君の事を思い出すだけで。
なんで、止まらないんだろう。
虚しさしかないこのキスを思い出すだけで。
なんで、止まらないんだろう。
走り去る君の姿を思い出すだけで。
――答えは、単純だった。
ボクはスケッチブックを手に取り、そして、ペンを走らせる。描くのは、ただ一人だけ。
ボクが今、一番忘れたくない人。
ボクが、箱庭に残したいと思った、唯一の人。
それだけ、君は、ボクにとって……
作品名:Awtew.2 (e-r) 1 作家名:犬ガオ