Awtew.2 (e-r) 1
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歩香の好きな飲み物は牛乳。
あの後、やっと落ち着いた歩香はパック牛乳にストローを刺さず、パックの蓋を開いて飲んだ。
「なんでそっちで飲むのさ」と聞いたら「こっちの方がおいしいから」とのこと。
というわけで、今スーパーにおいしい牛乳求めて来ているわけだ。
……いつも一番安い牛乳しか買ってないから、おいしそうな牛乳の値段を見て驚く。
嘘だろ、これじゃウェル○の方が安いじゃん!
手を伸ばす。リッター五百円の牛乳をカゴに入れる。……僕は明日の昼飯抜きを覚悟した。
「で、これがいわゆる、おいしい牛乳?」
どーんと『北海道十勝低温殺菌成分無調整生乳 自然』と筆字で書かれている牛乳を歩香は珍しそうに見ている。
「そうっぽいね。僕は安いのしか飲まないからどうおいしいかどうかは知らないけど」
ふーん、歩香は鼻を鳴らし、牛乳パックのフタを開き、一口飲んだ。
「あ、おいしい」
「ほんと? 良かった」
じゃあ一口頂戴、と言う前に、歩香が再びフタに口を付けて、
グッグッグッグッグッグッグッグッグッグッグッグッグッグッグッ
い、一気飲み?!
唖然とする僕を尻目に、ものすごいスピードで消費されていく僕のワンコイン。
ああぁぁぁぁぁぁぁ……、僕も飲みたかったのに……。
けぷ、と少しげっぷをして、「ああ、おいしかったぁ」と幸せそうに眼を細める歩香。
「……お腹、壊すよ?」
少し悔しかったので、そんなことを言ってみた。
「だいじょぶ、牛乳でお腹壊したことないから」
「さいですか……」
「飲みたかったの?」
歩香がそう聞いてくる。
「は、はは。そんなわけないじゃないか」
「すこし余ってるけど」
「頂きます」
ああ、どうせいやしいよ僕は。思いつつ歩香から受け取ろうとする。
「だめ、こっちから飲むの」
と反対側のフタを空けられるマイ五百円だったもの。
「ん? ああ、分かった」
と受け取る。そして本当に少しだけ残った『北海道十勝低温殺菌成分無調整生乳 自然』を口に含み、少し驚く。
「確かに、おいしい」
そう、おいしい。まろやかと言うよりも少しさっぱりめな口当たり。だけど後味はまたその牛乳が欲しくなるようなしっとり感と甘さ。のどごしは実に豊かで、『飲んでいる』という行動を再認識することが出来る。
「でしょ?」
作品名:Awtew.2 (e-r) 1 作家名:犬ガオ