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Awtew.2 (e-r) 1

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 彼が帰った。
 毎日毎日ボクと面会時間ギリギリまで話をして、飽きないのかな、と思ってしまう。
 それに、この口調を明かしてしまったということは、ボクは彼に心を許しかけている、らしい。……実感ないけど。
 コンコン、とドアが鳴る。
「はい」
 それに答えると、ドアが静かに引かれ、開いた。その先にはいつもの看護婦さん。
「今晩は、歩香ちゃん。夕飯持ってきたわよ」
「ありがとうございます」
 いつも通りの猫かぶり。
「またお昼残したようだけど、お腹の調子悪いの?」
「いえ、少し量が多かったので」
 何にもないボクが、この世を渡るために身に付けた。
「あら、そう。じゃあ担当の人に言っておくわね」
「ありがとうございます」
 孤独でも、生きるための、『私』。
「ところで、今日も歩かなかったらしいじゃない」
「はい」
「歩香ちゃん、歩かなきゃだめよ。リハビリにならないわよ?」
「すいません」
「あの子と話していたいのも分かるけど、あなたの為なんだから」
「セキ君は関係ありません」
「はいはい。じゃあ、また来るから。それまでに食べておいてね」
「わかりました」
 ドアが静かに閉まる。そして、息を吐いた。
 あぁ、今日も、ボクは、――――『私』でした。


作品名:Awtew.2 (e-r) 1 作家名:犬ガオ