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Awtew.2 (e-r) 1

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  2


 しばらく他愛もないことを話していると、少し喉が渇いた。時計を見る。まだ面会時間が終わるまで時間があった。
「ちょっと飲み物買ってくる。歩香も何か飲む?」
「ボクはパック牛乳」
「分かった」
 ドアを引いて、歩香の病室から出る。
「ん? ボク?」
 またドアを引いて、歩香の病室に入る。
「なぁ、歩香。さっきボクって言ってなかったか?」
 あ、と慌てたように口を押さえる。
「歩香?」
「や、やだなぁ、ボクがそんなこと言うわけがないじゃないですか」
 ………………。
「ボクが?」
「あ」
 ………………。
「あ、あゆ」
「あ―――――――! もう!」
 歩香がいきなり叫ぶ。なんか、今までのイメージにひびが入っていくような気が……。
「ど、どうし」
「もう、なんで自分からばらすかな! 馬鹿だ―――――、ボク――――っ!」
 ひびどころか、粉々になって吹き飛んでいった。
「いや、その、説明ぷりーず?」
「いや」
「い、いやって」
「ああもう! つまりボクの本当の一人称はボクで私というのはここで良い子に見せるための仮の一人称と口調だったって言うことどう分かった?!」
 はぁ、はぁ、はぁ、と早口で一気に喋ったために息が切れかけている歩香。
「つまり、猫かぶり?」
「そう。わるい?」
 見たことがない歩香の鋭い目つき。でも、少し涙ぐんでたりするところが……ああ、そう、僕はどんなに彼女が変わってもこう思うのだろう。
「いや、可愛いから良い」
 つい、言ってしまった。
「え」
 僕がその発言をしてから十秒経過。二人とも固まって二十秒経過。やっちゃったと思って三十秒経過。歩香の動きを伺って四十秒経過。
「え?」
 歩香が再び発言して二十秒経過。歩香の顔がだんだんと火照っていく。いや、まるで、赤熱する石のように赤くなっていく。
「あー、歩香?」
「へ、変なこといってないでさっさと牛乳買ってこ――――いっ!」
「は、はいっ!」
 いきなり怒鳴られ、僕はすぐにドアを引き、外に出て牛乳を買うために走る。
 本当にさっきとは正反対。だけど、歩香のそんな面が見れたのが、嬉しかった。


作品名:Awtew.2 (e-r) 1 作家名:犬ガオ