モノガミものぽらいず
で、夕食の時間。ウチが腕によりをかけて造った、特製の――量子調理機『一本包丁美食太郎』、略して『ビショ太郎』に作らせた――料理の数々。
めんどいし、『シェフのお任せコースモード』で作らせた料理は、そらアンタ絶品やで?
まずは味噌汁やろ?
んで、海鮮チャウダー。
んで、ボルシチ。
そんでもって、フォー……
……………………
「なんで汁もんばっかしやねん!」
食卓の脇で、思わずツッコんでしまうウチ。
『……やねん?』
秋月とハクビちゃん。二人の疑念とオドロキの眼差しがイタい。
「ああ、失礼しました。このコ先日、本場の上方マンザイ生で見たもんで、すっかりハマってしまいまして……ははは」
そう言ったのはイケメンで変態でカワイイ教え子の吉原くんや!
「あ、ああなるほど。俺も本場のマンザイ見てみたいな〜」
「おらも見てみてぇだな〜。面白いんだべな〜」
ナイスリカバリー! さすが、ウチが才能認めた変態や!
どーでもえーけど、さりげなくハクビちゃんの背後に立って、うなじと和服の胸元ちら見しとるあたり、ほんまに変態やな吉原くん!
「それではお客様、お食事の後は、露天風呂のご用意ができてますので」
ウチがそう案内すると――
「そうですか――じゃ、ハクビ、先入ってこいよ」
――返って来たのは、そんな秋月のセリフ。
――お? ハクビちゃんに気ぃ使こてる? ――
一瞬そう思った直後、今度はハクビちゃんが、頬を染めた。
「……秋月も……一緒に、入らねだか? せっかくの露天風呂……おら一人で入るのは、勿体ねぇだよ……」
まずは上目遣い。
んで、遠慮がちな物言い。
そして、真紅に染まった頬!
必殺やろフツー! どないなオトコでもイチコロやろこれぇ! 現にイケメンで変態の吉原くん、真上見上げて声にならん叫び上げとるやんかっ!?
思った通りや! 少なくともハクビちゃんは、環境変わってものゴッツ開放的んなっとる! 真夏のラヴァーズモード全開やねんか!
……しかし!
しかしや!
秋月の反応は、ザンネンながら予想通りやねん。
「……なんだよ、寂しそうに鳴くなって。俺に遠慮するコトないぞ? 広い――かどうか分かんないケド、露天風呂独り占めなんて、贅沢の極みだぜ?」
秋月〜〜〜〜〜……
こぉ〜のボクネンジンめぇ〜〜〜〜〜……
なんちゅうもったいないコトを〜〜〜〜……
イケメンで変態の吉原くんも、青筋立てて、拳握り締めとるやないかぁ〜〜〜〜……
――アカン、ウチ、マジギレしそうや――
「……そ、それではハクビ様? 後でご案内しますね?」
笑顔作って、取り敢えずウチはお茶濁すコトにした。
作品名:モノガミものぽらいず 作家名:山下しんか