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モノガミものぽらいず

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 小一時間後。食事が終わって、ウチはハクビちゃんと露天風呂に居た。今からお背中流すねん。
 イケメンで変態の吉原くんには、ウチの代わりに秋月に探りを入れてもろうとる。秋月のアホ、ここに来てまで六法全書持ってきよって。勉強する気満々やんか。そーゆーとこも、いつもと変えてもらわな、せっかくの計画が台無しや。
「べ、別に一人で入れるだよ〜……」
 遠慮がちに照れながら、ハクビちゃんが言う。
「まぁまぁ、ご遠慮なさらずに。旦那様からは、不足ない様に持て成せ、と言われておりますので」
 言って、ウチは泡立てたスポンジで優しく洗い上げていくねん。
 ――う〜ん……ハクビちゃん、柔らかいなぁ――
 実際にこうしてオサワリしてみると、あの身のこなしからは想像できひんくらいの柔らかさや。引き締まってんのに、柔らかい。
 ――オシリのシッポもかわえーし――
 ナチュラルに生えてるシッポが時々揺れる。耳もピクピクして、シッポと同じく毛並みもえーし。
 で、ついつい腕で隠されたハクビちゃんの胸元に目ぇいってまうウチ。
 ――意外と胸もあるしなぁ――
 思わず、巻いたタオルの胸元を引いて、自分のと比べてまう。
 ――べ、別に負けてへんねん。ウチまだ十二歳やもん。まだまだ成長するもん。ハタチんなったら、コレくらい余裕やねん――
「……女中ちゃん?」
 背中を流していると、不意にハクビちゃんがウチのコトを呼んだ。つか、女中ねぇ。……まぁ、そーなるんかいな?
「はい?」
「女中ちゃんは……おらのコト見えてるだな〜……」
 感情を乗せず、まるで自問みたいにハクビちゃんが言う。
「えっと……どうかしました?」
「……おら、変だべ? 耳とか、シッポとか……」
「え……と」
 言葉に詰まる。それはそうや。マトモちゃう。せやからウチは興味持ったんやし。けど、ハクビちゃんの言いたいことが、ウチには分かった。
「おらのイナカじゃ、おらみたいなの沢山いるだからさ……おら、今までなんとも思わなかっただけど……やっぱしおら、普通の人間とは違うだよ……」
 先日、吉原くんにまとめてもらった報告書。そこに記載されていた、『モノガミ』という名。超常の存在っちゅうコトなんや。ハクビちゃんは……
 ……そして、ハクビちゃんはぽつりと漏らした。
「……おら、寂しいだよ……」
 刹那、ウチは……
「……じょ、女中ちゃん?」
 思わず、ハクビちゃんを背中から抱きしめていた。
「……大丈夫。想う心があれば……人とか、人じゃないとか……関係ない。ウチ……じゃない、私たち女は、そういうものでしょう?」
「あ……う……」
 顔を真っ赤にして、俯いてしまうハクビちゃん。あぶないトコやった。ココで里心ついて、実家に帰られてもーたら、研究できひんくなるやんか?
 それは困んねん! せっかくのおもろそうな素材やのに!
「ハクビ様は……秋月様の事がお好きなのですね?」
 もう一押ししてみるウチ。是が非でも、秋月とくっつけたんねん。
 しかし、ハクビちゃんはそれ以上何も言えなくなったのか、黙ってしもた。っちゅーても、のぼせてんのかっちゅーくらい顔赤いから、モロ分かりやけどな〜♪
 なんて思ったとき。
『おうわぁっ?』
 そんな叫びと共に――
 海側の竹垣が倒れてきた。
 で、倒れた垣にへばりついとるゴミが二人。
「……あ、え? ハ、ハクビ……っ? ホントに人の姿……っ?」
 秋月と――
「あ、あの教授、コレは決してノゾこうとかしてたワケではなく、そ、そう! 秋月さんの状況改善にとっ!」
 ――我が不肖の弟子・イケメンで変態の吉原くんや。
 す・ず・め・ジェノサイドモード発動〜〜♪
 あ〜んど、
「きっ……きゃあああぁぁぁぁ〜〜〜〜っ!」
 ハクビちゃん緊急回避モードも発動〜〜♪

 こうして、オトメ二人のあられもない姿を覗こうとした鬼畜は、バッチリ退治されましたとさ♪

 補足
 どういう口実で秋月を連れてきたんかはナゾやけど、なんらかの効果はあった模様。その点だけはホメたんで? イケメンで変態で鬼畜の吉原くん!