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唯一神

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「え・・・? 一体どういう・・・」
理解できない、おっさんが言ってるのは極論だ・・・理に適ってない。
現におっさんが言ったほうで撃った銃弾は紙の端っこに当たっただけ。
俺が撃った銃弾はしっかり丸印の中に納まってる、つまり質を重視した結果だ!
そんな下手な鉄砲数撃ちゃ当たるなんて理屈、ありえないだろ!
「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」
心を見透かされたようなおっさんの一言。
「確かにそう思うのは仕方ないのかも知れないがな? 俺はお前に下手な鉄砲の撃ち方を教えたわけじゃない」
「な、なんだって? 明らかに下手な鉄砲の撃ち方じゃないか! あんな紙の端っこに当たっただけだぜ!?」
これにはさすがの俺も腹が立った。
どこをどう見たら上手な鉄砲の撃ち方なんだ、馬鹿馬鹿しい。
あの紙を見れば優劣は明らかだ。それをこのおっさんは負け惜しみみたいな言い訳ばっかり・・・!
「これはゲームじゃねぇんだ!!!」
怒声一喝―。
いきなりの喝に体が跳ねる、脈は速く、体が震える。
それ程におっさんの威圧感は凄まじかった。
否、俺が、俺の心が、弱かった。
実際おっさんは俺を力でねじ伏せようとした訳ではない。
ただ俺が、これまでの人生で人に声を荒げられた事が無かった。
つまり初めての経験。初めての事に脳が反応しただけ。
だからこれは怯えじゃない、怯えじゃないんだ・・・。
そう言い聞かせて自分の見聞をおっさんに伝える。
「ゲームじゃないのは知ってる! 銃がどういう用途で使われるのかも知ってる! それに、本とか映画なんかでもそういう訓練の時は照準を絞って射撃の練習をしてる! 何が違うっていうんだよ!」
心の中を全部ぶちまけた。俺はこういう人間なんだと声にして初めて理解した。
俺は弱かった。この程度の事を言う事がプレッシャーになり涙すら流させた。
「ガキだな。これからそういう感情は無用だ。捨てちまいな」
「!!」
折角気付いた俺の性格なるものを、このおっさん! このおっさんは! 捨てろと言ったのか!?
「そんな感情は不要なんだ。最初の頃のお前の人を寄せ付けない態度、人に興味をもたない態度。それだけでいい。お前はそれだけでいいんだ。」
意味がわからない・・・。意味がわからないんだよおっさん。
「それともう一つ。お前を兵士に育てるつもりは毛頭ない。これからは言うとおりにしてな。そうすりゃ分かるさ。お前の小さな脳みそでもな」
畜生! 何に腹が立つ訳でもない! でも、でも! 畜生―ッ!!

しかし一時の感情はやはり一時のものでしかないのか、それとも吹っ切れただけのか、はたまたおっさんの真意を理解しようとしたのか。
それは自分でも分からなかった。
作品名:唯一神 作家名:Xin