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唯一神

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それから俺とおっさんとの『生きるための術』の特訓が始まった。
銃器に触れた事は一度も無いが本や話では見たり聞いたりした事はある。
確か照準は・・・。なんて照準を絞ろうとすると。
「お前は早死にするタイプだな」
おっさんの叱咤が飛んでくる・・・。
『でも、照準を絞らないと的に当たらないじゃないか』
なんて思いを目にこめておっさんに問う。
「わかっちゃいねぇな! 実戦の中で照準を絞ろうなんて悠長な動きをしてたら殺してくれと言ってるようなもんだ!」
いいか? と、おっさんは続ける。
「まず手を的に対し直線に伸ばす」
言われて何重にも丸印が描かれた紙に銃を向ける。
「そうだ、どんなに動き回ってもそれだけに徹すればいい。じゃあそのまま撃ってみろ」
おっさんの言う事に反抗したい気持ちはあったが言われたとおり、中指に力を込め引き金を引く。
乾いた銃声の後、的に歪な形の穴が浮かんだ。
「どうだ?」
どうだ? って言われても・・・明らかに中心からずれてる。
それどころか丸印の内側にも入ってない、端の端だ。
これはお世辞にも『こっちの方がいいです! 感動しました!』なんて言えるはずも無い
人を舐めてんのか?このおっさんは・・・。
こんなんじゃ明らかにこっちの方が早死にするぜ。
『納得いかない』
別に口に出して言ってもいいのだが、今日はもうそんな気分になかった。
故に今日俺が口を開く事はもうない。おっさんの文字通り的が外れた発言にも腹が立ってる事だし。
「なぁんか不満そうな面するじゃねぇか!」
そりゃ不満なものは不満だ。喋る気力も失う程にはな。
よーし、いいだろう。一から説明してやる! なんて前置きを入れながらおっさんは理由を話し始めた。
「じゃあ、今度は照準を絞って撃ってみろ」
へっ、それなら言われなくてもやってやる。みてろよ? 度肝抜かせてやるからな。
俺はそう意気込んで的の『中心』に狙いを定め、腰を少し落とし・・・引き金を引いた。
まぁでも、そう思うようにはいかないのが俺が初心者だからだよな?
撃ち抜いた場所は狙いの中心とは少しずれたがそれでも丸印の内側には入っていた。
どうよ? とおっさんに得意面を向けてみるが。
「3秒だ」
「え?」
もう今日は言葉を発しない、そう決めた誓いは驚きの一言によって砕けて散った。
「正確には3.6秒。何が言いたいか分かるか?」
「・・・」
「ふぅ、少しは自分で考えるって事も教えないといけないか? じゃあヒントをやろう。前の射撃は0.7秒。これで分かったか?」
「・・・構えてから、撃つまでの動作時間・・・?」
答えは分かる、でもおっさんがこれで何が言いたいのかまでは分からない・・・。
「そうだ、これは撃つまでの動作時間で間違いない。―で?」
つまりはどうなんだ? と更に問いをかけてくる。
つまり、つまりは・・・。
「あー、もういい日が暮れちまう。今日だけは特別だ、先は長そうだしな。ただ、これはお前が本当に理解しないといけない事だ。心して聞くんだぞ!」
珍しく真面目な顔で念を押す。いつもニコニコしてるおっさんからは想像もつかない顔だ。
「約5発だ。お前がちんたら照準を絞ってる間に俺はお前を5回殺すチャンスがあるんだ。言い換えれば、お前は、『一発』の、銃弾を、撃とうと、してる間に、敵に、5回、殺されたんだ」
作品名:唯一神 作家名:Xin