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唯一神

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広かった、そして明るかった。それ以外は特に他の部屋と同じようにも思えた。
いや、初めて『地下室』といえる場所に入るのだからこれが普通なのかもしれないが。
階段はあんなにも暗かったのにな、2、3回足を踏み外しかけるくらいに・・・。
ただ圧倒的に他の部屋と違うのは、扉がやけに多い。
向かいの壁に5つ、左の壁には4つ、右の壁に5つ。
他が普通なだけに、やけにその扉が目立って見える。
「扉がそんなに気になるかい?」
笑顔でおっさんが尋ねる。
いや、もう一つ、もう一つだけ違うものがあった・・・。
俺は知らず知らずにそんなに心を奪われていたのだろうか?
おっさんの・・・おっさんの笑顔が、いつもと・・・?
「まぁただんまりか。ちょっとは君との仲が進展したと思ったんだけどなぁ」
なんて『いつものように』笑いながら頭を掻くおっさん。でも、違う。
おっさんの笑顔が、いつもと・・・違う?
ひどく寒気がする、蛇に睨まれた蛙というのはこんな気分なのだろうか。
「まあいい、ちょっとこっちに来なさい」
自分の言葉で進展していないなんて言いながら、俺に『生きる術』を教える事は辞めないようだ。
これからひどい事が起こる、このおっさんの話を断れば・・・いや、断らなくても、か。
謎の危機感と焦燥感で足がふらつき、口の中が粘つく。気付けば俺はガタガタと震え、ふらふらになりながらおっさんの所まで歩いていった。
「おい、どうしたんだ? 昼飯は随分と食べてたじゃないか。ん?」
気分が悪いのか?と態度ではとる。だがやはり俺を逃がす事はせず、笑顔で俺の手にある物を忍ばせた・・・。
恐る恐る持たされた物の触感を確かめる。
ずっしりとした重量感、汗などでも滑らないようにラバーグリップがあてがわれたソレ、ちょっと親指の位置をずらせば・・・、あれ?安全装置が・・・。
でも、見るまでもない・・・、そしてソレに目をやって改めて実感する。拳銃だ。
「トカレフTT-33っていう銃だ。安全装置が無いのに驚いたか? 握ったことも無いのにそんな事を気にするなんてたいした奴だな」
俺の腰元で声が聞こえる。
「本で、読んだ事があるだけです」
「そうか、やけに物騒な本を読んでるんだな、ヨシ!」
おっさんが頭を上げる。俺が銃を見て呆然としてる間に腰に何かを巻いていたようだが・・・。
サスペンダーとポーチ? ポーチの中にはナイフが忍ばせてあった。
一体おっさんは俺に何をやらせようというんだ、想像したくもないが。
「ナイフの方はファイティングナイフ、折り畳んだりできないタイプだから注意しろよ?」
「は、はぁ・・・」
おっさんが何か質問は? とジェスチャーを送りつける。
俺は固まりになった唾をゴクリと音をたてて飲み込んだ。すると少しは口の渇きは収まり、震えも幾分マシになってきて、余裕というものが少し顔を覗かせた。
「・・・リボルバー式の方がよかったですね」
「いい兆候だ。だがリボルバー式はバレットの取替えに手間がかかる。お前は少しどんくさそうだからな!」
後は言わなくても分かるだろう? とおっさんは豪快に笑い飛ばした。
作品名:唯一神 作家名:Xin