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唯一神

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もしもし、はい、ラインです。標的『サルド・アフィアー』を午後2時43分現在始末しました」
『そうか、キミ達に頼んで正解だったようだな』
電話越しに契約主の声が聞こえる。
「ありがとうございます、それで報酬の方なんですが」
『あぁ、既に指定の口座に振り込んでいるよ。ご苦労だったね』
おい、ちょっと電話変われ。こんな報酬でやる仕事じゃねえよ。そのキツネに俺が一発喝を入れてやる。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずかラインは契約主と話を続ける。
「振り込まれている分は後ほど確認します、しかしあなた方の提示した標的の情報との相違点がいくつかありましたので報告致します。まず―」
ラインはつらつらとその相違点とやらを契約主に述べていく。
おいおい、結構な激戦だったのによくそこまで把握してるな・・・恐ろしい女だ。
嫌な女で恐ろしい女か・・・嫁の貰い手は無いだろうな―ゲシッ!
「あいたっ!」
殺意がこもったレベルで睨み付けてくるライン、勿論契約主との会話も途切れる事無く続けている。
器用な女だな・・・お、三拍子揃っちまった。ご愁傷様・・・。
「以上が、あなた方が提示した情報との相違点です。これに対しどう対処なされるおつもりでしょうか?」
『ふむ、確かに我々が提示したものと若干の違いがあったようですね』
「若干どころではありませんが?」
『しかし、もう契約は済んだ後。それを我々にどうしろと言うのかね? 報酬の出来高でも期待していたのかね?
我々としては出来るだけ穏便に事を済ませたいのですよ。私たちにとっても、あなた方にとってもね』
「そうですか、それでは今後ともご贔屓に願います」
『今後があるかどうかは分からないがね、よろしく頼むよ』
プツッ―
おい、一体どういう事なんだよ。なんでもっと食い下がらないんだ。
「ちょっと電話貸せ、俺がかけ直す」
そう言うとまたやれやれというジェスチャーが来るかと思ったが、あっさりと電話は手渡された。
ラインは縁石に腰掛け持参していたコーヒーを飲みながら一息ついていた。
しかしそんな事はどうでもいい、俺はリダイヤルボタンを押し声を荒げる為に肺一杯に冷たい空気を吸い込んだ。
『おかけになった電話は、現在使われておりません。番号をお確かめの上―』
プヒュー・・・
体中の穴という穴から空気が漏れる音がした。
「おい、こりゃどういう事だ?」
ラインの手に持ったコーヒーの水面が静かに揺れる。
「標的会社は世界の為にある唯一無二の企業であり、標的会社がテロにより壊滅させられた事は大変遺憾に思うところであります。よって、我々は標的会社が壊滅した事の捜査を全面的に協力し、標的会社の皆さんの無念を晴らしたく思います」
「あ? 何言ってんだお前」
「多分こんな感じの台本がもう出来てるはずよ」
「そんな事して何になるんだ?」
「はぁ、ちょっとは頭で考えたらどう? つまり私たちと手を切った、正確には連絡をとらせないようにしたのはクリーンなブランドイメージの為。そんなクリーンな会社が殺し屋を雇ったなんて事実が知れたらクリーンどころじゃ無くなるでしょ? そういう事よ」
なるほどな。まあそんな事実を聞いたところで興味も無いわけなんだが。
「じゃあお前が電話を生半可なとこで辞めたのは?」
「これ以上こっちがせっついたらそれこそ出るとこ出られてお終い。何でも引き際ってものがあるのよ。
5年も私と行動を共にしてるのに、一向に自分で考えないわねアンタは」
そりゃな、問題から答えまで全部お前から出てくるんだ。余計な事考えて頭の痛い思いするよりは何も考えないほうが利口ってもんだろ?
「しかし、どうも納得のいかない取引だったぜ」
「アンタねぇ・・・私だって腹立ってんのよ? 契約主にもだけどそんな契約をホイホイと鵜呑みにするアンタにもねぇ」
今度は手に持ったコーヒーが数滴床に落ちるほど激しく揺れた。
しかし、コイツと出会ってもう5年も経つのか・・・。
えらく変わった・・・よなぁ?
作品名:唯一神 作家名:Xin