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唯一神

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「ちっ、話が違うじゃねぇか。あのキツネ」
標的は一人、組織としても10人程度の小規模。邪魔する者がいるなら殺しても可。
成功報酬はそれで1000万。確かにこんなおいしい話があるかと疑ってもよかったかもしれないが・・・。
「なにブツクサ言ってんのよ。私が初めに忠告したじゃない。ちゃんと私の話を聞かないからこんな事になるんでしょ?」
「あぁ、いたのか・・・ライン」
実際には部下の数が・・・43人か。抵抗したやつだけでこの数だ、これで小規模の組織なんてよく言うぜ。畜生、これなら3000万は固い仕事じゃねぇか。
いや、ちょっと待てよ? 一体誰が相場なんて決めるんだ? ん?ビジネスの主導が向こうにある以上俺は常に損する立場って事じゃないのか?
なんてこった・・・。
「最初からずーっとあんたの後ろでカバーしてたんだけどね、私は。それとアンタまた考えが変な方向に行ってるわよ」
「いたか? 正直、興味が無いから分からなかったな・・・。それと、俺の頭の中を読むな」
「はぁ、アンタの頭の中なんてネズミでも分かるわよ。中身カラッポなんだから」
やれやれなんてジェスチャーをとるライン、嫌な女だ。何故俺がこんな奴と組まなきゃならないのか永遠の謎だぜ。
「私に対して言いたい事があるのは別にいいんだけど、それで? その引き金は引くの? 引かないの?」
そう言われて自分の構えてる銃の先を見る。
「あ、あがっ・・・あぁぁあぁ・・・」
口の中に銃口を入れられガタガタと震えている標的の姿があった。
この男が正義だったのか悪だったのかは知らないが、俺は契約を受けた身だ。
コイツが悪だろうが正義だろうが関係ない。そして悪だろうが正義だろうが、興味も無い。
だが・・・
「し、ししし死ぬ前に一度でいい・・・娘の声を・・聞かせてはくれないだろうか・・・? 頼むっ!!今日は・・・娘の・・・誕生日なんだ・・・」
震える声で懇願する標的、よほど溺愛して育てた愛娘なのだろう。
この死に瀕する間際に自分の事ではなく、娘の事を思えるっていうのはどうも悪人ではなさそうだが。
・・・でも、コイツの願いを叶えて報酬が増える訳でもないだろう。
「なあ、コイツを一回逃がしてみたら報酬は増えると思うか?」
ラインは溜息を吐きながら先程よりももっと疲れた様子で一言―。
「減るでしょうね」
「・・・だろうな」

タンッ―

「任務完了」
よし、契約主の所に異議申し立てにでも行くか。
屋外に出た俺はもう見飽きた灰色の空に目をやり、もう何も感じなくなった乾いた冷たい空気に身を包んで、目標の拠点を後にするのだった。
作品名:唯一神 作家名:Xin