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紅茶をもう一杯と探偵は口にする

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 私は思わず身を乗り出して尋ねていた。テレビで放送されていることが、まさか現実で、このように見聞きできるとは。ラッキーなどとつい不謹慎に考えてしまう。
「一応、殺人だからな」
 不由径さんがため息をつきながら付け加える。
「それもな、参ってるんだ」
「なにに」
「死んだやつがわからない」
 それは、またすごい台詞だ。
「つまりは今、見つかっている胴体は双子のうちどちらかだと」
「ああ。首も、一応は見つかったんだ」
「ばらばら死体だったのか」
「そういうこと」
 ひぇ。
 気持ち悪い。
 思わず想像して眼を背けてしまった。女の子には刺激が強いというものだ。そういうのは。
「ただ見つかった部屋が問題だ」
「と、いうと?」
「窓、しまってたんだよ。鍵もしまってた……胴体が見つかった部屋は。首が見つかった部屋は、そこからかなり離れていて、さらに言うとまたしても」
「密室!」
 思わず勢い込んで、私は後ろから声をあげる。
 不由径さんが頷く。
「そういうことだ。陽和子ちゃん、声が楽しそうだな」
「え、あ、つい」
 楽しんではいけないのはわかっているし、これが大変不謹慎であることも理解しているのだが、思わず声に滲んでしまう。
 いかん、いかん、現実に人が死んでるのに。
「あ、けど、指紋とかでは」
「部屋のドアなんかは全部ふき取られてる。その上、その死体の指紋と一致」
「双子の指紋は、確か、おんなじだったよね? 確か一卵双生児の場合は」
 意知朗さんが言うのに不由径さんが大きく頷く。
「そうだ。双子の指紋はおんなじなんだよ」
「つまりは、どっちが死んだのかまるでわからないってことだ」
 意知朗さんの言葉に不由径さんがこくこくと頷く。
「あのー、私、気になるんですが」
「ん?」
 後ろからの私の発言に不由径さんが顔を向けてくる。
「双子の仲はどうなんですか? 悪いとか、ないんですか? 悪ければ、とりあえず、殺したのは、そっちだってことになりません?」
 結構乱暴なことを言っているのは自分でもわかっているが、言ってみる。
「それらは、俺たちも思うよ。だがな……調査すると、この双子、身分違いのドラマある境遇らしいが、仲はかなりいいらしい。むしろ、この双子の義理の母親、本妻はその双子の仲の良さを妬む位だそうだ」
「ねたむ?」
「この義理てか、育ての母親はな、双子でも自分の育てているほうを溺愛してるんだ。それで双子なのに、もう一人のシンデレラボーイのほうは嫌ってる」
 同じ双子なのに。
 けれども、確かに自分が育てた子供ならばまだ愛情はあっても、同じ見た目でも違う子だったら、どうだろう。混乱はするだろうし、愛情というものを抱けというほうが、無茶かもしれない。なんだかんだといっても、愛人の子だし、そういう深い恨みもあるのだろう。
「けど、そのシンデレラボーイのほうは、その本妻さんに好かれようと、けっこう健気に努力していたっていうし、本妻さんに育てられた子供のほうも、相当二人が仲良くなるように心を砕いていたらしい」
「つまりは、その本妻さんが片方のことを毛嫌いしていたということか」
「そういうこと」
「じゃあ、双子が双子で殺しあうってことはないってことですか」
 思わず尋ねる。
 この場合、多額の財産を狙った双子の……というと、あんまりにも非現実すぎるだろうか。またはテレビドラマの見すぎ?
 けれども、私の考えを不由径さんは笑ったりはしなかった。むしろ、すごく神妙な面持ちで頷いてくれた。
「そう、たぶん、ない、とは思う。だが、金が絡むと人は変わるからな」
「ねぇ、ふーちゃん」
 意知朗さんが首を傾げる。
「密室はいいけども、どういう部屋なのか、いまいちわからないけども。写真とか、ある?」
 不由径さんが身を乗り出す。
 なんか内緒話をするときみたいな感じに。私も思わず身を乗り出す。意知朗さんも。三人で額をくっつけあう。
「もちろん」
 そういって懐から出された写真は数枚。
 フローリングの床には赤い血痕。机があって、椅子もあるという普通の部屋だ。
 その数枚に、血のついているものがあった。窓の傍だ。それも暗い。窓に何か看板が置かれているらしい。窓の写真を見ると、その窓の鍵は上から下に占めるかんぬきになっているらしい。それがしっかりと閉められている。
 部屋が品よくあるせいか、むちゃくちゃ雰囲気がある。
「家は馬鹿みたいにでかくて、四階建てなんだ。いろいろと増築していった結果らしい。だが、住んでる奴が家族三人に手伝いが一人に犬だけだっていうんだから世の中、間違ってるよなぁ」
「少ないですねー」
 思わず私、声を出して聞いてしまう。
「ああ、なんでもそういう方針なんだと、犬なんてでっかい黒い、えーと」
「ラブラドール?」
 私が言うと不由径さんが頷く。
「そうそう、人懐っこいのが首輪だけされて、庭の中動きたい放題でさ、それがすげーやんちゃで、気がつくと鑑識の持ってきたカメラとかどこぞに隠して見つからないの」
 まったく、困ったもんだと不由径さんは言いながら肩をすくめた。
「そのカメラはまだ見つからないしなぁ」
「ねぇふーちゃん」
 意知朗さんが声をかけると頭をかいていた不由径さんが真剣な眼になる。何か事件の解決のヒントを得られると想っているらしい。
「この、窓にある看板は?」
「ああ、これは、なんでも古い作りで風がはいってくるから風除けがほしいとかで双子の兄のほうが手伝いにかわせたらしい。ちょっと大きめの板だったな」
「へぇ」
「なんかわかったか」
「ううん。こういう板は、買うの大変だったろうなぁて、運ぶのも」
「いや、意外と薄いやつらしいから。ああ、重みもそこまでないらしい。まぁ風避けだからな。で、話を戻すぞ。ここは一階の部屋で、元々はここの主人の書斎だったそうだ。胴体が見つかったところだ。ちなみに、死体は、この床のところに転がっていたわけだ。んー、あーとな」
 そういって不由径さんは立ち上がると、突如として壁にへばりついた。
「こんなかんじだ。こんなので、窓辺のところにころーんとな」
 たぶん、死体の真似をしているのだろう。
 なんか、ヤモリが床にひっついているようにしかみえないが。
「首はどこで見つかったの?」
「ああ。それはな。こっちの写真な」
 二枚目をぺらりとめくる。
 ふわふわの絨毯の敷かれた部屋。そこの黒色に金庫が大きく写されている。私としては、まさか人様の家に、こんな高級そうな金庫があることが物珍しい。
「ここからだ」
「金庫から?」
「そう、馬鹿丁寧にも、しっかりとダイアルロックした金庫だ」
「その金庫の番号を知っているのは?」
「奥様と息子の片方、育てられたほうだけだ。ちなみにこの金庫は、いつもは土地の権利書とかをいれていて、滅多に開けることはないそうだ」
「あれ、けど、じゃあ、犯人って双子の育てられたほうってことじゃないんですか?」
 私、思わず聞き返してしまう。
 だって、金庫の番号を知っているのか、その二人だけだとしたら、犯人は自然と特定されてしまったも同然。
 けど、そこで不由径さんが首を横に振る。
「けど、ここには、小さなキーがあるだろう」
「あ、うん」