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狂い咲き乙女ロード~3rdエディション 暴かれた世界~

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 数多くいた取り巻きたちは、すでに信奉者というような感じになっていた。
 そこで湧き上がるのは一つの疑問。
 何故由利恵はわたしを選んだのかということ。
 自分でいうのも悲しいけれど、わたしにはこれっぽっちも他人より秀でたところがない。運動は絶望的なほど苦手、学問も語るには及ばない。目もかなり悪いからゴツい眼鏡が手放せないし、身長も高くないし、スタイルだっていい方じゃない。
 なのに何故?
 部内にはもっと美しい少女たちがいたにも関わらずどうして? この疑問があるかぎり、わたしは由利恵に『撰ばれた』という境遇を素直に喜ぶことが出来なかったのだ。
 偶然と呼ぶには出来過ぎなタイミングで、由利恵が貸してくれた本にこんな一節があった。


 撰ばれてあることの
 恍惚と不安と
 二つわれにあり


 この一節を見つけた時、わたしは一人部屋の中で震えた。だが、この時わたしは、ようやく自分が百合の園に踏み込み過ぎていたことを悟った。

 戻れない道と薄々勘付きながらも、
 それでもわたしは、
 ただその恍惚に溺れていたかった。
 たとえそれが束の間の夢でもいい。
 わたしはただ、

 ――――誰かに愛されたかった
 ――――誰かに撰ばれたかった

 こんなわたしでも、
ただわたしが傍にいるだけで、
ただわたしが生きているだけで、
喜んでくれる人がいる。
それで十分なはずなのに、いつの間にかわたしは、漠然とした不安と、つまらない劣等感に怯えて、大事ことが見えなくなっていた。
 捨てられるのが怖かった。見切られるのが怖かった。わたしの世界が暴かれてしまうのが怖かった。


 だから、逃げた。


 初めて由利恵に触れられた日、
 それはわたしが由利恵を拒絶した日でもあった。


 その日以来、わたしは見えない影に追い立てられるかのように、薔薇派の結成に奔走した。何かを捨て去るため、何かを断ち切るため、無我夢中で走り回った。
 部内でもまだ強かった百合派からの攻勢に対抗するため、目をつけたのが佐藤君と本山田君だった。
 現実世界で美しいBLの成立など不可能、と嘲笑う百合派を黙らせるには、生きたサンプルがどうしても必要だった。

そしてわたしたち薔薇派による禁断の計画が始まった。