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狂い咲き乙女ロード~3rdエディション 暴かれた世界~

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 独り部室に取り残されたわたしは、床に寝転がったまま、ぼんやりと天井を眺めていた。どれほどの時間が経ったのかはわからない。この部室は何時だって薄暗いから、光源によって判断することが出来ないのだ。脇に落ちていた眼鏡を拾ってかける。この態勢からだと、普段何気なく見ていたものたちがひどく大きく見えた。長机、段ボールの山、積まれた雑誌などに取り囲まれている自分が酷く小さなものに思えた。
 身体の節々が痛む。
 でも痛いのはきっと身体だけじゃない。
 のろのろと上半身を起して、あ、駄目だ。まだ動けない。思考回路だけがかろうじて動き出す。それではっきりとわかるのは、全てが終わったということ。
 計画は失敗。ただ二人の少年を傷つけただけ。わたしの両の手には、抱えきれないほどの罪が、そして心と身体には罰が残った。
 結局のところ、わたしは何がしたかったのだろう。

 由利恵を拒絶し、
 佐藤君を欺き、
 本山田君を裏切った。

 それで尚わたしは何を求めるのだろう?
 もう薔薇も百合もどうだっていい、全てがどうでもいい、みんな、みんな、消えてなくなればいい。こんなわたし自身も消えてしまえ。偽善者、裏切り者、ああ、どんな辱めの言葉だって甘んじて受けてやる。だから、これだけは言わせろ、

――――全部、ぶっ壊れてしまえ

 そう呟くと、少しだけ身体が軽くなったような気がした。ようやく立ちあがれそうだった。長机の脚に縋り付くようにしながらも、なんとか立って、乱れた制服の埃を払った。そしてもみ合ったはずみで床に転がっていた鞄を拾い上げ、部室を後にした。
 行く当てなんてどこにもない。
それなのに足は自然と動いていた。昔のことを思い出したからなのかはわからないけれど、気づけば屋上へと続く踊り場にわたしはいた。日も暮れたこんな時間では、既に校舎には人気はない。屋上に入っても誰も咎める者はいないだろう。階段を登りきって、ドアが見えたその瞬間、――あぁ、そうか、記憶が呼び起こされる。
 再び南京錠がぶら下がっていた。たしか由利恵が再び鍵をかけたはず、そんなことさえも忘れていた。

 これではっきりした。
 あの頃にはもう戻れないと。

 わたしはまだ光沢の残るその錠を手にしながら、嵌めガラスの向こうの世界のことを少し想った。