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狂い咲き乙女ロード~3rdエディション 暴かれた世界~

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「訊きたいのは、えっと……何て言えばいいのかな、その、どうにもならないっていうか、そういう状況になって……あー、上手く説明出来ない」
「日本語でおk」
「じゃあ露骨な訊き方をするよ? ぶっちゃけた話、犯されそうになった感想は如何様ですか?」
 彼女が身を強張らせたのがわかった。その表情が一気に曇っていく。彼女は先程よりも弱々しくなった目で僕を見た。
 やっぱり怖かったのか。当たり前だろうけど。そう、それが普通だよな。誰だって怖いよ。実際僕だって怖いし。犯されるなんてことは真っ平御免だ。
 そして彼女が答えるより先に僕は続けた。
「返答次第でどうこうするつもりは……一応ない。多分。でも僕がどういう人間かはわかったでしょ? ドアには鍵かかってるし、続きをやろうと思えば簡単に出来るんだよ。次は容赦しない。本当のところを教えてくれないのなら、

君のココロも
カラダも
ぶっ壊すしかない」
 そう言って少し、また少しとにじり寄っていく。
「え、あ、嫌っ」
 後ずさりしようったってこの狭くて汚い部室の中じゃそうもいかない。後ろにそびえるはダンボールの山たちだ。逃げ場を失った彼女は僕を見上げることしか出来ないようだった。
「そんな目してもダーメ」
 もう彼女との距離は限りなくゼロに近くなった。手を伸ばすまでもない。出しさえすれば届く間合いだ。制服に手をかけようとした時、
「……や、やめてください……お、お願いします」
 震える声を絞り出すようにして、俯きながら彼女は言った。だが僕は笑顔で言う。
「それだけ?」
 プライスレスにして嫌味満開の偽善者スマイルと台詞とのミスマッチに戸惑い、再び泣き出しそうになりながらも、彼女はなんとか言葉を紡ごうとした。だがその前に僕の

     中の
            何かが  切れた。
 そしてそのまま彼女の上に覆いかぶさった。
 暴れて、何事かを叫ぼうとする彼女の口を塞ぎ、とうとう僕は言ってはいけないことを口にする。
 禁断の言葉。彼女がコワレルマホウノコトバ。
 これを言われたら彼女は何も言えなく、そして何も出来なくなる。効果は残酷なほどに覿面であるのは保証したっていい。
 ずっと気になっていた。
 何故彼女がここまでしてくれるのかということ。
 いくらBLに興味があるからといって、他人の色恋沙汰、それも同性愛にここまで踏み込んでくるなんて普通じゃない。
 それでも僕は信じていたかった。
 だって、初めての理解者かもしれなかったから。
 でも違った。彼女は嘘吐きだった。偽善者以外の何者でもなかった。
 彼女は自らの野望の為に僕と千秋を利用していただけだったのだ。

 知ったのは偶然だった。僅か数時間前の出来事。昼休みのことだ。なんとなく気分を変えようと食堂に行ったのが事の発端だった。一緒に食べる友達なんていないから、隅の席で一人うどんを啜っている時に、ふとどこかで聞いたような声がした。丼から顔を上げて、その声の主を探すべく、聴覚を研ぎ澄ます。すると斜め前の席に座っている二人組みの片割れであることはわかった。さらに耳を澄まし、会話の断片を懸命に拾っていくうちに、僕は全てを理解した。
 森さん、そして薔薇派の野望の正体。それは『三次元における理想的ボーイズ・ラブの成立と観測』だということを、僕は知ってしまったのだ。
 食堂から出た二人組みの後をつけ、人気の無い文化棟に入ったところを捕まえて、脅迫的肉体言語を用いて洗いざらい白状させた。ここでようやくミニコミ部という大きな闇の中を見ることが出来たわけだ。
 捕まえたのは森さんによって部室に連れていかれた時に会った薔薇派の一年生二人で、尋問の末にかなりの情報を聞き出すことに成功した。