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朱く染まる日

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「……まあ、その、なーんて主張しておきながら、明確な答えは決まってない」
「……………………」
「ただ、クラスメイトとしてなら、お前は好きな部類に入る。他のぺちゃくちゃ喋る女子たちに比べたらかなり良心的だしな。だけどそれは、お前の求めてる感情じゃないかもしれない」
「………………」
「だけどせっかくの告白をむげにしたくはない。もしもやったら、五百住に殺されるかもだし。そこで俺は考えた」
「…………?」

 久良木を抑える手を離し、後退して右手を差し出してくる。その頬は微かにもみじ色だ。

「俺たちさ、幼なじみから始めてみない?」
「……え?」
「アレだよ、『お友だちから始めましょう』に近いノリ。お互い子供の頃から知ってるのに友だちからってのも変だから、幼馴染」
「うん……」
「で、幼なじみとしての関係を作ってる間に、俺はお前への答えを考えておく。そうだな、高校に入るまでには決めておくよ」
「……何か、変なの」

 奇妙な提案のお陰で緊張が解けたらしく、久良木は柔らかい笑みを零す。南風原が「だろ?」とにやついた。

「で、どうよ? 結構いいアイデアだと思うんだけど」
「南風原くんがそれでいいなら、いいよ。少し照れるけど、何となく嬉しい答え」
「んじゃ、幼馴染らしく名前で呼び合うか?」
「名前はさすがに恥ずかしいよ」
「あー、俺はいい提案だと思うんだけどな」
「南風原くん、そういう所は鈍感だもんね」
「お、言うようになったな。いいぞ、どんどんらしくなってきた」

 自然と進む言葉のキャッチボール。この時久良木の脳裏に浮かんだのは、まだ右も左も恋も知らなかった幼少期。子供でしかないあの頃は、何も考えずに互いの名前をたくさん口にした。

「じゃ、幼なじみらしく一緒に帰ろうぜ、久良木。それとも、どこか寄り道する?」
「寄り道よりも、五百住くんに謝りに行きたい」
「了解。今は委員の仕事してる筈だから、学校戻るか」
「うん」

 木の葉が揺れて、久良木を祝う。クラスメイトの関係から一歩踏み出せたことが嬉しくてたまらない久良木は、心臓が踊る、口元が緩む、頬が赤くなると、とにかく溢れんばかりの幸せが胸から湧いてくるのを感じた。
 幼馴染として、一体どのような会話をするべきか、どのように同じ時間を過ごすべきか、これから毎日一緒に帰るのか、頭の中はこれから先のことばかり考える。
作品名:朱く染まる日 作家名:森丸彼方