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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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飛んで魔導士ルーファス

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「肉体関係まで結んでいたなんて……(ルーファスとローゼンクロイツがあ〜んなことや、そ〜んなことをしてたなんて)」
 クラウスの脳ミソは完全にピンク色に染まっていた。
 落ち込んでいたハズのルーファスがムクッと立ち上がった。
「ちょっと待ってローゼンクロイツ、勘違いされるような言い方しないでよ。幼馴染だから、小さいころよく一緒にお風呂に入ってただけじゃないか!」
 そーゆーことらしい。
 ルーファスの言葉は思わぬところで波紋を呼んだ。
「幼馴染!?」
 驚いた声をあげたのはビビだった。
 なぜか落ち込むビビ。
「幼馴染……(二人が幼馴染だなんて、アタシが入れる余地ないじゃん)。わかった」
 なにがわかったの?
「今回の勝負は負けを認めて本妻の座は譲ってあげる。でも愛人の座は誰にも渡さないからね!」
 そんな捨て台詞を吐いてビビは背中を向けて走りだしてしまった。
 遠くに消えて見えなくなるビビの後ろ姿。
 取り残された3人はなにがなんだかわからない。
 ルーファスは不思議な顔をして呆然としてしまっている。
「なんだったんだろう、あの子……?」
 ルーファスの横には立ち直って真顔になっているクラウスが立っていた。
「ビビちゃん泣きながら走っていったぞ。本当にルーファスのことが好きなんじゃないか?」
「まっさかー、だって今日はじめて会ったばかりだよ?」
 ルーファスはそう言って頭を抱えるばかりだった。
 カップラーメンの中から現れた自称仔悪魔の美少女。そんな仔悪魔に惚れられる理由なんて、なにひとつルーファスは思いつかなかった。
 今の今までじっとしてた白馬にクラウスが跨った。
「そろそろ城に戻らないと爺がうるさいからな。僕はこれで失礼するよ、二人ともまた明日学校で会おうな!」
 白馬に乗って颯爽とクラウスは消えてしまった。
 ローゼンクロイツもルーファスに背を向け、この場から立ち去ろうとしていた。
「じゃ、ボクも帰るよ(ふあふあ)。ピエール呪縛クンがおなか空いたらしいからね(ふにふに)」
 ピエール呪縛クンとはワラ人形の名前だ。
「待ってローゼンクロイツ」
 呼び止めるルーファス。
「なに?(ふにゃ?)」
「なにしに来たの?(こっち方面ってことは僕に用があったんじゃないかな)」
「……忘れた(ふにゃ)」
 ローゼンクロイツのド忘れは知人の間では有名だ。ド忘れの達人と言ってもいい。そのクセ、人を苛めるような材料は絶対に忘れない。
 ローゼンクロイツの眉がかすかに動いた。
「そうだ(ふにょ)。あの悪魔、かなりクラスが上の悪魔だよ(ふにふに)。あと、もうひとつ、あの悪魔……忘れた(ふにゃ)」
 絶対なんか重要なこと言おうとしてた。
 結局、忘れたままローゼンクロイツは、肩越しに手を振って去ってしまった。
 残されたルーファスはう〜んと唸る。
「(結局、なんか全体的になんだったんだろう?)」
 嵐の前の静けさではなく、嵐の後の静けさ。
 とりあえず一軒落着したみたいなので、ルーファスは自宅に帰ることにした。
 玄関ではなく、勝手口のドアを開けて中に入った……瞬間、ルーファスはドアを閉じた。
 いわゆる、見なかったことにした。
 そして、もう一度、ゆっく〜りとドアを開けた。
「おかえりダーリン♪」
 ビビがいた。
 しかも、カップを片手にテーブルでくつろいでいる。
「なんでいるわけ?(てっきり自分ちに帰ったのかと)」
「だってここはアタシたちの愛の巣じゃん?」
「意味がわからない(いや、言葉の意味はわかるけど、この状況が理解できない)」
「夕食にする? 先にお風呂にする? それともアタシにする?(いやん♪)」
「…………」
 無言というか、離脱したルーファス。現実に意識が戻って来た時には、彼の中でなんかのスイッチがオンになっていた。
「さてと、そうだテレビでも見ようかな、うんそれがいい」
 ルーファスの視界にビビは入っているが、意識には入っていない。除去フィルターがかけられたのだ。
 いつもと変わらぬ平日の夕暮れ。
 ルーファスはリビングのソファに座ってテレビのリモコンでオン。
「あーあ、ドラマの再放送終わっちゃてるよぉ」
 なんて言ってるが、ぶっちゃけルーファスはテレビの画面が見えてなかったする。
 なぜならば!!
 テレビの前にビビが座り込んでるから!
 しかし、ここで決して邪魔だなんて口走らない。それを言ってしまってはビビの存在を認めてしまうことになる。
 ここは断固としてシカト。
「今日の夕食なににしようかぁ、今のピザ美味しそうだったなぁ(今日はデリバリーにしようかな)」
「アタシもピザ食べたぁ〜い。さっきのCMのやつ頼もうよ!」
「……やっぱりピザはやめよう。めんどくさいからレンジでなんかチンしよ」
「だったらアタシの手料理食べてよぉ!」
 聞こえない聞こえない。
 ルーファスはテレビを消してソファで寝たフリ。
 目が覚めたらビビがいなくなってるように、なんて淡い期待を抱きながら寝たフリ。
 ソファにうつ伏せになって現実逃避という名の寝たフリ。
 が、現実はそんなに甘くなかった。
 謎の圧力がルーファスの背中に落ちた。
「う゛っ!」
 カエルが潰れたようなうめき声をあげたルーファス。その背中に乗ってる物体B。
 しかも、その物体Bが跳ねる跳ねるジャンプする。
「ぐっ、ぎゃ、ぐわっ!」
 短い奇声が連続してルーファス口から洩れる。
 このままでは圧迫死してしまう。てゆーか、すでに肋骨の1本や2本は逝ってしまってるかもしれない。
 そして、ついにルーファスは負けを認めた。
「ごめん、私が悪かった……悪かったら降りてください」
「あれぇ? なんか今人の声が聞こえたような気がするなぁ」
 秘儀シカト返し!
「僕が悪かったから許してぇ……」
 ルーファスが?私?ではなく?僕?というときは、かなり素のときだ。
「しょーがないなぁ」
 主導権は完全にビビだ。
 ぴょんとビビはルーファスの上から跳ね降りた。
 やっと重荷から解放されたルーファスは――逃げた!
 逃げる気満々で逃げた。
 のだが……いきなりルーファス急停止。首をかっ切ろうと突き付けられた鋭い鎌。もちろん鎌の柄を握っているのはビビだった。
「きゃは、どこ行くのダーリン?(いきなり逃げるなんてヒドイ)」
「ちょっとトイレ」
「へぇ、わざわざトイレに行くのに外に出るんだぁ?(もぉ、ウソが見え見えなんだからぁ)」
「い、家のトイレが壊れちゃってるんだ、あはは〜」
 ルーファスの手は窓枠にかかり、今にも跨いで外に出ようとする格好で固まっていた。
「(このまま僕は拉致監禁されるのか……自分ちで)」
 そんな危機は回避しなくてはいけない。
 ルーファスは土下座した。
「お願いだから帰ってください、お願いします」
「帰れって言われても……帰る方法わかんないんだもん♪」
 満面の笑みで言われた。
 帰るってカップラーメンの中に戻る方法?
 ルーファスは尋ねる。
「もしかして……迷子なの?(いや、家出少女って可能性もあるな、それで迷子になったとか)」
「まあ、似たようなもん。だから帰るとこないから、ここに泊めて?」
「…………(どうしようかな)」