飛んで魔導士ルーファス
魔法のランプに閉じ込められたという話はあるが、いったいビビはなぜカップアラーメンなんかに?
ここでルーファスはひらめいた!
「閉じ込められたってことは……極悪人!!」
ビビちゃんショック!
「こんな可愛いアタシに向かって極悪人だなんてヒドイ……ぐすん」
涙ぐむビビを見てクラウスはルーファスを肘で突く。
「女の子を泣かせるなんてヒドイじゃないか、責任を取って結婚してあげろよ」
「きっとウソ泣きだよ。私だってあんなのウソ泣きだってわかるよ!」
ルーファスはそう言いながらビビを見た。
するとビビは涙をボロボロ流して泣いていた。
ちょっと焦るルーファス。
もしかしてマジ泣きだった?
そして、誰かがボソッとつぶやいた。
「女の子を泣かせるなんて、ルーファスもなかなか隅に置けないね(ふにふに)」
驚いてルーファスが振り返る。
「なんでここにいるの!?」
ルーファスの眼に映る空色ドレス。
果たしてこの人物はいったい?
《3》
空色ドレスの麗人。顔は美少女だが、中身は腹黒いと噂のローゼンクロイツ。ルーファスの同級生の電波系魔導士だった。
しかも、ローゼンクロイツの手にはなぜかワラ人形?
「恋ノ三角関係カヨ!」
ワラ人形がしゃべった。いや、おそらくローゼンクロイツの腹話術。
男が2人と泣いてる女が1人の状況は、勘違いされてもしょーがない感じだった。
だが、クラウスは真っ向から否定。
「僕は無関係だからな。そこにいるビビちゃんはルーファスの婚約者だ!」
ルーファスも否定。
「違うから、無理やり契約書にサインさせられた被害者だよ!」
そして、ビビは公定。
「違うもん、ダーリンとアタシはラブラブなんだから!」
ものすごく話がこじれてる。
しかもそこにローゼンクロイツまで加わってしまった。
ワラ人形を持った手がルーファスの鼻先に突き付けられる。
「コンナ可愛イ子を嫁サンニモラウナンテ、憎イネェ旦那ァ!」
キーが高くてふざけた声。ローゼンクロイツは口を動かしていない。かなりの卓越した腹話術だ。ちなみにローゼンクロイツいわく、意思を持ってしゃべっているのはあくまでワラ人形だと言い張る。
ルーファスはもううんざりだった。
「だからさ、はじめから説明するからちゃんと聞いてよ。突然、私の目の前に現れた自称仔悪魔のビビ、そこのピンクの髪の毛の子ね」
と、ルーファスはビビを指さして話を続ける。
「それで、鎌を突き付けられたり、包丁を突き付けられたりして、無理やり悪魔の契約書にサインさせられたんだよ。その契約っていうのがどうやら婚約書だったらしいんだ」
「結婚式ハ何時ダ馬鹿ヤロウ!」
説明の甲斐なし。
ワラ人形に結婚の日取りまで聞かれ、まったくルーファスの状況が伝わっていない。
こうなったらルーファスは己の力で困難を乗り切るしかない。
そして、ルーファスが取った方法とは!?
ルーファスはローゼンクロイツの腕に抱きついた。
「ごめんビビ、実は私たち結婚してるんだ!!」
ルーファスとローゼンクロイツのカップリング!!
しかもローゼンクロイツは男だ。見た目は女の子だけど。
でも、そんなことなど知らないビビ。
「そ、そんなぁ……アタシとの関係は遊びだったのねぇ!」
そして、クラウスもショックを受けていた。
「し、知らなかったのは僕だけなのか……(ローゼンクロイツはともかく、ルーファスもだったなんて)」
ショックでクラウスは地面に両手をついてしまった。
しかもローゼンクロイツはローゼンクロイツで否定しない。
「そういうことらしいよ?(ふにふに)」
なんかいろんな意味に取れるビミョーな言動。
本妻現るみたいな展開にショックを受けていたかと思われたビビだが、もうすでに立ち直ってビシっとバシっとローゼンクロイツを指さした。
「決闘よ!」
宣戦布告をしたビビに対して、ワラ人形が勝負を買った。
「望ムトコロダ、コンチキショー!」
こうしてルーファスを巡る戦いが勃発してしまった。
そして、地面と向き合っていたハズのクラウスまでもが立ち上がった!
「不純な行為を見過ごすわけにはいかない、僕も戦うぞ!」
ローゼンクロイツがボソッと。
「クラウスもルーファスに気があるのかい?(ふにふに)」
無表情だったローゼンクロイツの口元が、一瞬だけ邪悪な笑みを浮かべた。口の悪いワラ人形より、よっぽど本人の方が邪悪だ。
「違うわっ! 僕はただルーファスの友人として正しい道に進んでほしいだけだ!」
クラウスの瞳は熱い炎を宿していた。
そして、当事者であるルーファスは置いてけぼり。
「(……どうしてこんな展開になるの)」
そのままルーファスを置いて、ビビが仕切っていた。
「じゃあ、勝負で勝った人がルーファスを自由にしていいってことでオッケーね?」
「私の意思とかはないわけ?」
口を挟んだルーファスの鼻先にワラ人形が近づいた。
「アルワケネェーダロ、馬鹿ヤロウ!」
だそうだ。
勝負の方法をビビが独断と偏見で決定する。
「ダーリンへの愛の大きさを証明した人が勝ちでいいでしょ?」
これにクラウスとローゼンクロイツは頷いた。
てゆーか、本当に頷いてしまってよかったのだろうか?
これってまさか不純同性行為に発展するんじゃ……?
ローゼンクロイツが一歩前に出た。
「じゃあボクから証明するよ(ふあふあ)」
いったいどんな方法で証明するというのか!?
固唾を呑んで周りはローゼンクロイツの次の行動を見守った。
「ルーファスのファーストキスの相手はボクだよ(ふあふあ)」
「マジかーッ!!」
絶叫にも似た雄叫びをクラウスはあげた。
てゆーか、この話って愛の証明っていうか、触れられたくない過去の話では?
秘密を暴露されたルーファスはすでにKOされて地面に両手両膝をついていた。
「あはは、あれは偶発的な事故だったんだ……あはははは〜」
ちょっと壊れ気味のルーファス。彼にとってファーストキスの思い出はトラウマだったらしい。
そして、数分前のこんな会話を思い出してほしい。
――その慌て方……もしかしてファーストだったの!?
――ち、違うよ! 3回……いや2回……。
実はローゼンクロイツを含めて3回だったりする。
ショックを受けているはルーファスだけじゃなかった。
クラウスもルーファスと同じ格好で落ち込んでいる。
「本物だったのか……本物のそっち系だったのか……二人ともそっちだったのかーっ!」
友人との今後の付き合い方について、ちょっと本気で悩むクラウスだったりした。
ローゼンクロイツの先制攻撃は二人の負傷者を出した。
しかし、戦いはまだまだはじまったばかりだ。
真の敵であるビビはノーダメージだった。
「ふふん、ダーリンのファーストキスを奪ったくらいどうしたっていうの?(別に減るもんじゃないし)」
ここでローゼンクロイツはさらに攻撃を繰り出した。
「ルーファスの身体なら隅々まで知ってるよ(ふにふに)。もちろんルーファスもボクの体の隅々を知ってるよ(ふにふに)」
この発言を聞いたクラウスはさらにダメージを受けた。
作品名:飛んで魔導士ルーファス 作家名:秋月あきら(秋月瑛)