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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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飛んで魔導士ルーファス

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第6話_流れ解散……



《1》

 ビビが自分の世界に帰ってしまって数日の時が過ぎ去り、ルーファスは昔と同じ平穏で退屈……でもない日々を過ごしていた。
 いつもどおり朝を向かえ、いつも通りに学校に通い、ローゼンクロイツやエルザ、クラウスたちと楽しく会話する。
 ただ、カーシャはあの一件以来姿を消してしまって行方不明だ。それ以外はビビが現れる前の生活となんら変わらない。そう、昔とはなんら変わらない。
 昔と変わらない生活。けれど今を生きてるからって昔がなくなるわけじゃなかった。
 ルーファスはせっかくの休日を家でゴロゴロしながら過ごしていた。ちょっと前なら、部屋でゴロゴロしてるとビビが乗っかって来たものだった。けれど、ビビは帰ってしまった。
 物音を聞いたような気がしてルーファスは急に立ち上がって押し入れを開けた。けれど誰もいない。いるはずがなかった。
 窓が開く音がしてルーファスは驚いて振り向いた。
「なんだ、クラウスか」
「なんだで悪かったな、誰かと間違えたのかい?(はぁ、まだ元気ないなルーファスは)」
「いや、別に……(ビビが帰ってくるはず……ないよね)」
 ルーファスは再び床の上に寝っ転がり、クラウスがルーファスの頭の近くに座った。
「元気ないな……ビビがいなくなってから」
「そ、そんなことないよ、私は今日も元気いっぱいだよ!」
 慌てて立ち上がったルーファスを見ながらクラウスはため息を落とした。
「ビビとルーファスはいい線行ってたと思ったんだけどな(だから僕はビビに手を出さなかったのに)。君が元気ないと、周りも元気がなくなるだろう?」
「私は元気だから……」
 その声には力がなく、ルーファスはうつむいてしまった。
 二人がしんみりした雰囲気に浸っていると、タンスの引き出しがガタガタっと揺れて、中から何かが飛び出してきた。
「呼ばれて飛び出てチャチャチャチャ〜ン!」
「ビビ!?」
 思わずルーファスは声をあげたが――違った。
 タンスから出てきたのはビビの形をしたパペット。それを操っているのはベル姐だった。
 ビビが最初にルーファスの前に現れた時に言ったフレーズと同じ言葉で登場したベルは明るくあいさつをした。
「あほほほほほ、ごきげんいかが?(と、悪質なイタズラで登場しちゃったり♪)」
 サイテーのイタズラだった。
 ベルはタンスの引き出しから這い出すと、ルーファスの傍にちょこんと座った。
「ビビがハーデスに帰ったって風の噂で聞いたけど、本当らしいわねぇん(フラれた男って本当に情けないわよね)」
 ベルの心の声が聞こえたのか、ルーファスの心にグサッと槍が突き刺さった。かなりの精神的ダメージ。
「わ、私はビビが、い、いなくなって清々してるんだからね!」
 動揺しすぎ。
 そこにベルが追い討ち。
「なんでもビビが帰る決め手をつくったのはアナタらしいわねぇん、風の噂で聞いたわよぉん(風の噂ってカーシャちゃんだけどぉん)」
 槍で射抜かれた傷に荒塩を練りこまれたルーファスは完全に魂を飛ばし、床に手をついて深〜く項垂れた。
 ルーファスだってなんであの時にあんな言葉を言ってしまったのかわかっていない。強いて言うならばノリ。それがちょっと今回は裏目に出た。
 項垂れるルーファスの両肩にクラウスが優しく手を乗せた。
「ルーファス、顔上げろよ」
 魂喪失のルーファスはピクリとも動かない。
 クラウスの眉がピクッと動く。
「顔上げろよ、みんなルーファスのこと心配してるんだぞ!」
 無理やりルーファスの頭を持ち上げたクラウスはグーパンチ!
 根性を叩きなおす1発をルーファスの頬に入れた。
「最初から落ち込むならなんで止めなかったんだよ。僕だったら絶対に止めていたぞ!」
「クラウスはそーゆーの慣れてるだけだろ! もういいよ、寝る、寝るったら寝る。だからみんな早く部屋出てってよ!」
 自暴自棄になったルーファスに真剣な顔をしたベルが呟いた。
「アナタは本当にそれでいいの?(やっぱり人間なんてこの程度なのね)」
「みんなで僕がビビのこと好きだったみたいな言い方しないでよ!」
「自分の気持ちに嘘をつくと後で後悔するわよ」
 どこからともなく魔法のホウキを取り出したベル。彼女はそれを床の上で寝転がるルーファスの胸に突きつけた。しかもかなりの力で。ある意味グーパンチ。
「うっ……なにすんの!(いきなり胸押したら窒息するし!)」
「受け取りなさい、せんべつよぉん。きっと何かの役に立つでしょう。じゃ、アタクシは帰るわよぉん」
 ベルはルーファスに魔法のホウキを渡すとタンスの中に戻って行った。と思いきや、すぐに顔を出して一言。
「この家は客にティーも出さないのぉん?(……頑張りなさいルーファス)」
 心の中でルーファスに言葉を送ったベルは本当に帰って行った。
 ベルから託されたホウキを握り締めながらルーファスはうつむき震えていた。それを見たクラウスは感動していた。
「ルーファス……ビビを迎えに行く気になったんだな!(やっぱりルーファスもやるときはやるんだな)」
「……こんなホウキ貰っても邪魔だよ!」
 そういうオチかいっ!
 突然立ち上がって部屋を出て行こうとしたルーファスにクラウスが声をかけた。
「どこに行くんだい?(今度こそ本当にビビを迎えに行く気に?)」
「おなかが空いたから何か食べにキッチンに行こうかなぁって」
「周りの空気読めてないのか?(……見事な状況無視だな)」
「クラウスも食べる?」
「うむ、もらおう」
 笑顔で即答。この人も場の空気無視だった。クラウスも駄目ジャン!
 ちょっぴり小腹の空いた2人はキッチンへゴー。
 キッチンの段ボール箱をモソモソっとルーファスが取り出したるは、カップラーメン!
「これでいいよね?」
「まあ、それでいいのだが……なぜホウキ手放さない?」
「気にしなくていいよ、目の錯覚だから」
「目の錯覚って……」
 ベルからもらった魔法のホウキをなぜかキッチンまで持って来ているルーファス。邪魔なら自分の部屋に置いてくればいいのに、ねえ?
 ルーファスは2つのカップラーメンにお湯を入れて、それをテーブルの上に置いてクラウスと一緒に3分待つ。
 カップラーメンとにらめっこしながらルーファスがボソッと呟く。
「呼ばれて飛び出てチャチャチャチャ〜ン……なんてね」
「なんだいそのフレーズ?」
「なんでもないよ、ただ言ってみただけ」
「……?」
 ――1分経過。
 ――2分経過。
 ――3分待たずにふた開ける。
 固麺好きのルーファスは3分待たずにふたを開けるのだが、3分前にフタ開けるのは他にも意味がある。
 フタを開けてカップラーメンを食べはじめたルーファスは再びボソッと呟く。
「普通のカップラーメンだよね」
「普通ってなにが?」
「いや、別に……」
「さっきから変だぞルーファス。ビビちゃんのこと考えているのだろ?」
「……クラウスには関係ないよ」
「都合の悪い時だけ関係ないなんてズルイぞ」
 煮え切らないルーファスにクラウスは、エルザのパンチを食らわしてやろうと拳を握ったとき、家のチャイムがピンポーンと鳴った。
 ルーファスは箸でエルザの顔を指して次にキッチンの出口を指して一言。