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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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飛んで魔導士ルーファス

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 ちゃぶ台に着いたカーシャは茶菓子とお茶をみんなに勧め、勧められたみんなは何となくちゃぶ台に着いた。ちなみに人数がちょっと多いので狭い。
 お茶を一口飲んだモリーが軽く咳払いをして話しはじめる。
「……安物のお茶じゃな。もっといいお茶を出せぬのかえ?」
「おお、すまんな。モリーの上品な口には合わなかったらしいな。でもな、学校の安月給で出せるお茶はそれしかないのだ!」
 微妙にカーシャはモリーに喧嘩腰だった。だが、モリーはお清まし顔で受け流す。二人の間にはビミョーな温度差があった。
 それはさて置き、ルーちゃんが気なることはコレ。
「で、どうしてビビがどうして追われてたんだ? 一番まともな回答をしてくれそうなモリーどうぞ!」
 どうぞ、とモリーに手を向けたルーちゃんの首筋に、マルコが腰に差してあった剣を抜いて突きつけた。
「モリー公爵ないし、モリー様とお呼びしろ。次に呼び捨てにしたら容赦しないぞ!」
「……じゃ、じゃあ、モリー様どうぞ!」
 ルーちゃんが蒼い顔をして改めて手を向けると、モリーは堰を切ったように放しはじめた。
「まず、そこにおるビビは妾の養女じゃ。じゃがな、どういうわけかワガママな娘に育ってしまってな、ある日お灸を据えるつもりでカップラーメンの中に閉じ込めてやったのじゃ」
 モリーの顔が真剣そのものなので、誰も『なぜカップラーメン?』にというツッコミは入れない。代わりにルーちゃんは手を上げて別の質問をした。
「で、なんでビビを追っていたのだ?(お尻ペンペンでもするつもりだったのか?)」
「そうじゃ、カップラーメンから抜け出した罰として、地獄の業火で熱した鉄棒でお尻ペンペンしてやるつもりじゃった。それにビビは半人前ゆえノースで暮らすことを許すことはできん。すぐにでも妾とともに異界へ帰るのじゃ!」
 清まし顔のモリーの清閑な声がご近所さんに響き渡った。

《4》

 道路のど真ん中でちゃぶ台に座ってる5人。それだけでもご近所迷惑で異種異様だっていうのに、誰もが口を閉じて沈黙しているのがミョーに怖い。
 そして、ついにビビが叫んだ。
「ヤダよーっ!」
 ご近所さんに響き渡るビビの声。
 カーテンの隙間から謎のちゃぶ台集団を覗き見してる人がいたりするが、おおっぴらに見ることはない。
 ちゃぶ台の横を母親に連れられた子供が指差しながら通り過ぎるが、『お母さんあれなに?』『駄目よ、見ちゃ駄目よ』なんて会話をしながら足早に通り過ぎていく。
 そして、電柱におしっこをする野良犬。
 誰もが微妙に次の展開を見守っていた。
 一生この人から離れません、ってな感じでビビはルーちゃんの首に抱きついた。
「アタシはダーリンと一緒に暮らすんだから、ママはさっさとハーデスに帰ってよ!」
「妾が心配して迎えに来てやったというのに……」
 いかにも悲しそうな顔をするモリーの瞳にキラリと光る一滴。マルコはすぐにハンカチをモリーに手渡した。
「モリー様、これでお涙をお拭きください」
 そして、すぐにビビを見つめた。
「ご息女と言えど言葉が過ぎますぞビビ様」
「だってぇ〜、アタシとダーリンはもう夫婦だしぃ」
 このビビの言葉を聞いてモリーとマルコはフリーズした。二人にとっては驚愕の新事実発覚!
 どっかに飛んでいた意識を戻したマルコがちゃぶ台返し!
 そのまま勢いよく立ち上がった。
「ど、どういうことだ小僧説明しろ!(コロス、コロス、絶対コロス!!)」
 大声を出した横でモリーがあまりのショックに意識を失ってフラフラ〜っと倒れた。その倒れ方はおでこに軽く手を当てて、あくまでも可憐に倒れた。さすが貴族。
「モリー様、お気を確かに!?」
 マルコはすぐさまモリーを抱きかかえ、鋭い眼差しでルーちゃんをにらみ付けた。
「小僧!」
 怒鳴られたルーちゃんはビシッバシッシャキッと立ち上がった。ルーちゃんはルーファスと違って怯むことはないのだ……たぶんね。
「小僧小僧ってレディーに向かって失礼だぞ! わたしを呼ぶ時はちゃんと大魔王ルーファス様と呼べ。それにわたしはビビと結婚したつもりなんてないぞ!」
「ではなぜビビ様は貴様に抱きついておられるのだ!」
 マルコの指摘どおり、ルーちゃんにベタベタ抱きつくビビの姿は恋人以上の関係にしか見えない。
 そこに極めつけとしてビビがどこからともなく契約書を取り出してマルコに叩き付けた。
「これがダーリンとアタシが婚約した証!」
 叩きつけられた契約書をマルコはマジマジ読みはじめ、次第に顔つきが険しくなって、仕舞いには顔面蒼白になった。
「こ、これは正しく悪魔の契約書ではないか!? な、なんてことだ……モリー様のご息女ともあろうお方が、こんな平民と結婚など……許してはおけぬ!」
 瞬時に抜かれたマルコの刀をルーちゃんが真剣白羽鳥!
「ぐわぁっ!? わたしを殺す気かこの野蛮人が!」
「俺に向かって野蛮人とはなんだ! 俺はモリー様にお仕えする高貴なる騎士だ!」
「武器も持たん一般人に剣を振るう騎士なんて外道だ!」
「事態が事態だ、俺は貴様を必ず斬る。さすれば契約は無効となるのだ!」
 2人が死闘を繰り広げようとしている中、1人は気絶、1人はルーちゃんに抱きついたまま、そして最後の1人は!?
「ふふっ、青春だな!」
 カーシャは他人事としてお茶をすすりながら観戦していた。
 緊迫感ゼロできゃぴきゃぴする仔悪魔少女。
「ダーリン頑張って、見事のこの戦いに勝ってアタシを掻っ攫って!」
「わたしはおまえのために戦っているのではない、自己防衛として戦っているのだドアホがっ!」
 両手で挟んだ剣を力いっぱい横に押し下げ、ルーちゃんは剣を放してすぐにマルコと間合いを取った。だが、マルコの動きは早く、風を切るスピードで地面を蹴り上げルーちゃんに襲い掛かってくる。
「お命頂戴!」
「ぐわぁっ!」
 しゃがみ込んだルーちゃんの頭上を掠める研ぎ澄まされた剣技。
 紙一重で相手の攻撃を避けたルーちゃんは叫び声をあげた。
「武器をよこせ、わたしにも武器をくれ!」
 と言ったルーちゃんとカーシャの視線が合致する。そして、ニヤっと笑ったカーシャは胸の谷間から何かを取り出すとルーちゃんに向かって投げた。
「これを使え!」
「サンキュー……ってフライパンかよ!」
 カーシャの特殊武器――魔法のフライパン。テフロン加工でサビに強い!
 フライパンを否応なしに構えることになったルーちゃんにマルコの剛剣が振り下ろされる!
 カキィーン!
 ――相打ち。
 マルコの一刀はルーちゃんのフライパンによって見事防がれた。フライパンが斬られることもなく、剣が折れることもなかった。フライパン対剣の世紀の大対決は五分と五分……なのか!?
 ルーちゃんの攻撃!
 ――たたかう
 ――ぼうぎょ
 ――逃げる
 ――ひ・み・つ
 秘密ってどんなコマンドだよ!
 ってことでルーちゃんは秘密コマンドを使った。
 素早く動いたルーちゃんはビビにヘッドロックをかけて拘束し人質に取った。
「あ〜ははははっ、ビビを人質に捕られては手も足も出まい!」
「きゃ〜っ! ダーリンあったまE♪」