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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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飛んで魔導士ルーファス

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第1話_仔悪魔ちゃん勝手に召喚!


《1》

 ご近所でも有名なへっぽこ魔導士ルーファスのご帰宅。
 今日もいつものように魔導学院に行き、いつものように一戸建ての借家にご帰宅。
 ちょっぴり肩を落とした後ろ姿から察するに、いつものように先生に叱られたか何かトラブルを起こしたらしい。
 しかし、そんなルーファスにさらなるトラブル……そう、悪魔の罠が待ち受けているなんて、目の前のことで人生いっぱいいっぱいのルーファスは知る由ものなかった。
 むしろ、知っていたら魔導士を目指すより、エスパーを目指しなさい!
 いつものようにポストを確認するルーファス。
 なんと!!
 そこに運命的な出会いが待ち受けていた。
「……カップラーメン?(んなアフォな)」
 心の中でセルフツッコミをするルーファス。
 ルーファスはグルグル眼鏡を少し上げ、目をゴシゴシこすって自分の目を疑った。
 だって、ポストの中にカップラーメンが入っていたんですよ!
 そりゃ誰でも自分の目を疑うってもんです。
 こんな衝撃的な出会いに、ルーファスはカップラーメンを手にとって、頭の上にクエスチョンマーク。
「海鮮ドクドクモンスター風味、12パーセント増殖中……?」
 絶対食べたくない。
 中途半端なパーセンテージだし、増量じゃなくて増殖?
 いったいカップの中でどんな生命の営みが行われているのだろうか?
 常人であれば、こんなカップラーメンは見なかったことにするか、もしくはごみ箱行きだ。
 だって毒が入っているかも知れないし、最悪謎の生命体が増殖しているかもしれない。
 しかし!!
「食べてみようかな」
 ちょうど小腹も空いていたし……ってそういう問題かっ!
 というノリツッコミ。
 カップラーメンを持って、ちょっぴりルンルンで家に入り、そのままキッチンにレッツ&ゴー!
 フタを几帳面にめくって、中に入っていた謎のかやくAとBを混ぜて、謎の液体AとBを調合して、なんだか魔法薬を作る工程のようだ。
 そして、ポットからお湯を注いで3分くらい待つ。
 ワン、ツー、3分待たずにフタ開ける。
 カップラーメンの中からありえない量の煙がモックモック。
 濃霧警報発令!
 立ち昇った煙で視界が奪われてしまった。
 しかも煙を吸ってせき込んでしまうルーファス。
 ま、まさかこの煙は毒なのかっ!
 そんなこんなで湯煙り殺人事件が起こるのかと思いきや、晴れた煙の中から現れたのは生着替え中の美少女。
 ピンクのツインテールが特徴的な、小柄で厚底ブーツの美少女。ちなみに今日のパンティーの色は白だ。
 しかもお尻にはクマさんプリント。
 目と目が合って、美少女は顔をピンク色に染めた。
「あっ……(見られてる)」
「どういう仕様だよっ!」
「3分って書いてあったの読んでないのバカーッ!」
 怒鳴り声をあげた美少女の回し蹴りがルーファスの顔面にヒット!
 いろんな意味で鼻血ブー!
 ルーファスはエビ反りのまま後方にぶっ飛んだ。きっと演出的にはスローモーション。
 ほっぺたを膨らませて、美少女はプンプンしながらカップラーメンの中へ帰って……帰って……帰った?
「カップラーメンに住んでるのっ!?」
 鼻血をボトボトしたままルーファスはツッコミを入れたが、その声はキッチンに響いただけで返答はなかった。
 誰もいないところでツッコミを入れても、友達のいないただの寂しい人だ。
 腰が引けたままルーファスは恐る恐る、手なんかブルブルさせながら、カップラーメンのフタに手を伸ばした。
 ここでフタを開けるか、それとも開けないのか?
 人生の岐路に立たされてしまったルーファス。
 果たして彼の下した決断とはっ!!
 ルーファスがフタを開けようと手を伸ばした、そのとき!
 フタが勝手に開いて煙がまた勢いよく噴き出した。
 腰を抜かしたルーファスの視線の先には、白い煙に映るツインテールの少女のシルエット。
「呼ばれて飛び出てチャチャチャチャ〜ン!」
 カップラーメンの中から現れた謎の美少女。着替えも終わり完璧だ。
 ゴス+パンクでゴスパンクの格好をしたピンクの髪の美少女。
 ニッコリ笑う口から覗く八重歯がチャームポイントだ。
 テーブルの上に仁王立ちするミニスカの少女。ルーファスの目はおのずとソッチ方面に行ってしまった。
「あのぉ……パンツ見えてるよ」
「えっち!」
 謎の美少女はテーブルの上からジャンプして、そのままルーファスの顔面に膝蹴り!
「ぐはっ!(教えてあげただけなのに)」
 鼻血をブーしながらルーファスは床に後頭部ゴン。
 天井を見つめるルーファスの眼前に突き付けられる謎の紙。
 謎の美少女の唐突発言。
「早く契約書にサインしてよ」
「……は?(悪徳商法?)」
「アタシを呼び出しておいて契約しないっていうのは、そりゃお客さん困りますぜ」
「……いや、だからさ、まず君だれなの?」
 尋ねながらルーファスはどっこらせと立ち上がった。
 美少女は八重歯を覗かせニカっと笑った。
「アタシの名前はシェリル・ベル・バラド・アズラエル。愛称はビビ、よろしくね♪」
「で、何者なの?(カップラーメンの守護神?)」
「職業は仔悪魔見習い。これでも魔界ではちょ〜カワイイ仔悪魔でちょっとは有名なんだからね!」
「で、なんでカップラーメンから出てくるわけ?(そんな召喚聞いたことないぞ)」
「まっ、それは話せば長いんだけど……そんなことより契約してよ!」
 再びルーファスの眼前に突き付けられる契約書。
「契約って言われてもまだ私は学生の身だし」
 ルーファスは断る口実を考えながら鼻血を拭く物を探していた。
 そんなルーファスに差し出される紙。
「ああ、ありがとう……って契約書じゃん!」
 親切でティッシュでも渡してくれたのかと思いきや、思いっきり契約書だった。
 契約書は羊皮紙の本格派で、文字も古代文字で書かれていた。
 仔悪魔+契約書=悪魔の契約。
 そんな契約を結ばされて、命なんて代償にされたら堪ったもんじゃない。ルーファスは羊皮紙を叩き返した。
「契約なんて絶対しないから、早く帰ってよ」
 その言葉にビビは唇を尖らせた。
「冷やかしですかお客さん? 人の生着替えやパンツを見といて、ただで済ませようとしてるんですかい?」
 ビビは近くにあったイスを蹴っ飛ばして破壊した。悪徳業者だ。
 壊れたイスを見て凍りつくルーファス。
 美少女の仮面を被った怪力女。
 そもそも悪魔って種族は人間より身体能力が優れ、少女の見た目をしていても人間の何倍も生きていたりする。
 契約しないと痛い目に遭いそうだ。でも、契約したら……?
 こうなったら奥の手を使うしかない!
 ルーファス逃亡!
 敵に背を向けてルーファスは全力疾走しようとした。
 が、その足が地面に張り付いたように止まった。
 全身から冷汗を噴き出して、顔面を真っ青にするルーファス。その首に突き付けられているは大鎌の刃だった。
 ニッコリ笑顔で大鎌を持っているビビちゃん。そのまま鎌を引っ張ったら首が飛んじゃいますよ状態。
「もしかして逃げる気じゃないでしょうねぇ?(美少女仔悪魔ビビちゃんから逃げようなんて1000年早いよ)」