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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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飛んで魔導士ルーファス

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「そう言えば、アタクシの領地に物騒な子たちが住み付いちゃって、困ってたのよねぇ〜ん」
 絶体絶命。
 この話を聞いたルーファスがベルに激しく詰め寄る。
「マジですか!? 物騒ってどのくらい物騒なんですか!?」
「女子供がよく狙われて、あ〜んなことやこ〜んなことをされて、仕舞いにはそ〜んなこともされるらしいわよぉん(きゃあ、お代官様ぁ)」
「マジでーっ!?」
 城の中に響き渡ちゃったルーファスの声。ちょー絶体絶命。
 ベルがニッコリ笑顔で言う。
「マジよぉん」
 ルーファスの心は不安で押し潰されそうになった。早く二人を助けに行かなきゃいけない。そんな衝動にかられて居ても立ってもいられない。――胸が熱く苦しい。
 だってベルの爆乳がルーファスの胸板をグリグリしてるんだもん。
「うわぁーっ、だから離れてってば。それよりも早く2人を……カーシャどうにかしてよ!」
「めんどくさいからイヤだ」
「めんどくさいってなにそれ! 元はと言えばカーシャが無理やり採りに行かせたんじゃないか!」
「違うぞ、ルーファスを賭けて熱い戦いをしに行ったのだ(ふふっ、青春だ!)」
 絶対にカーシャは助けに行く気ゼロだった。しかも非を絶対に認めない。さすがカーシャ。
 カーシャも話してもラチが明かないことを悟ったルーファスは、目の前にいるベルに顔を向けるが……顔じゃなくて胸しか見えないし!
「アタクシもイヤよぉん」
 爆乳に断られたし!
 ルーファスは爆乳に訴えかける。
「そんな、だってここってベル姐さんの領地でしょ?」
「関係ないわ」
 即答。
「ベル姐さん、そこをなんとか……」
「知らないわぁん」
 また即答だった。
 ベルはカーシャと同じで人の言うことを訊くのがキライなタイプだ!
 こうなったら奥の手だ。
 ルーファスは自らグルグル眼鏡を外した。
「お願いしますベル姐さん、私の友達2人を助けてください」
 シリアスモードのルーファスを見て、普段のルーファスを知ってるカーシャは紅茶を噴いた。
「(ふふっ、笑えん。腹が、腹がよじれる……ふふふふふっ)」
 大爆笑だった。
 いい男に頼まれたらしょうがない、ついにベルが動き出した。
「立ちなさいカーシャ」
 こう言われたカーシャは無言で立ち上がりベルを見据える。
 立ち上がった女同士が互いを無言のまま見据える。殺伐とした空気が場を満たし、ルーファスの息は詰まってしまいそうだった。いったいこれから何が起ころうとしているのか!?
 ベルの拳が高く上げられ、カーシャの拳も高く上げられた。そして、ベルが大きな声を出した。
「最初はグー、ジャンケンポン!」
 カーシャがグー。ベルがチョキ。勝者――カーシャ!
 ジャンケンに負けたベルが床に膝をついてうなだれる。
「ま、負けた……アタクシの負けねぇん……」
 この一部始終を見ていたルーファスはポカンと口を開けた。
「はぁ?」
 呆然とするルーファスの肩に、立ち上がったベルが両手を乗せる。
「というわけよぉん。アタクシとアナタが救出大作戦に行くことになったわよぉん」
 どこからともなく大型バイクを取り出したベルは、それに跨りルーファスに顔を向ける。
「後ろに乗りなさぁい」
「はぁ?」
「後ろに乗れって言ってるのよ、聴こえてるでしょ?」
「はぁ」
 しかたなくルーファスもバイクに乗った。
「アタクシの腰にしっかりと手を回しなさぁい」
「はぁ」
 ルーファスはベルの背中に自分の身体を密着させ、腕をベルのお腹に回してしっかり掴まった。ベルの髪からシャンプーにいい香りがする。ルーファスはベルの身体からちょっぴり離れてへっぴり腰になった。
 キラリーン!
 と、ベルの瞳に光が宿る。
「行くわよぉぉぉん!!」
「ぐわぁっ!?」
 ルーファスを乗せたバイクが空に浮き、もうスピードで動き出した。しかも、ここって部屋の中。
 城の中のため低空飛行をするバイク。そんじゃそこらの絶叫マシンより、よっぽど怖い。ちなみにバイクは後ろに乗るとさらに怖い。
 ゴォォォォッ!! と、ルーファスの耳は風の音以外の一切の音を遮断され、身体に伝わる揺れは震度4くらい?
 城門を抜けたところでベルが大声を出す。
「しっかり掴まりなさぁい!」
「ぐわぁっ!?(落ちるし、死ぬし!)」
 バイクは直角90度に方向転換し、天を突く勢いで上昇した。ルーファス失神寸前。
 ジェット機並みに空を飛ぶバイクにシートベルトもなしに乗っていられるのは、きっと魔法の力。魔法って素晴らしいんだね。だが、後ろに乗っているルーファスは魔法の許容範囲外にいるらしく、空気抵抗もろ受けまくり。ルーファス失神。
 バイクのスピードが徐々に落ち着いてゆったり運転になったところでルーファス復活。
「マジ死ぬかと思った」
「それは大変だったわねぇん。けどぉ、悪い知らせがあるわ(ピンポンパンポ〜ン)」
「聞きたくないです」
「燃料が切れたわ」
「はぁ?」
「すっかり燃料いれるの忘れてたのよねぇん、おほほほほ」
「つまり?」
「落ちる(ひゅ〜〜〜べちょ!)」
「なんですとーっ!?」
 どーりでスピードが落ちてたはずだ。あはは、落下だってさ。
 笑えねぇ!!
「アタクシに考えがあるわぁん(我ながらいいアイデアが浮かんでしまったわね)」
「何デスカ?」
「アタクシ1人くらいなら城まで戻れると思うのよね(さよなら、いとしい人)」
 ドゴッ!
 ベルの肘打ち炸裂。
 思わずルーファスがベルの腰から手を離したところで、バイクは180度回転。つまり逆さま。
「うわぁ!?」
 ひゅ〜〜〜。
 ベルの視線の中で小さくなっていくルーファスの姿。ルーファスは空飛ぶバイクから落とされたのだ。
「さ〜て、城に戻って燃料補給でもしようかしらねぇん」
 たった今すごい酷いことをしたとは思えないベルは、爽やかな顔をして城に向かってバイクを旋回させた。
 ルーファスの運命はいかに!?

《4》

 一方、ビビとクラウスはどうなっていたかというと――案の定捕らえられていた。
「こんなに可愛い仔悪魔ちゃんを捕らえてどうするつもり!」
 手足を縛られ、ビビとクラウスの身体は一緒にグルグル巻きにされていた。
 ビビとクラウスの酔いはとっくに醒めている。というか、カーシャに銃で脅されて走らされるよりも前の、別人格のカーシャに怒鳴られた時点でとっくに醒めていた。
 砂漠のど真ん中にある集落……なのにここだけ冬真っ盛り!
 集落の家々は氷でできており、住んでいるのが人間じゃないことは明らかだった。
 ビビとクラウスはその集落の中央にある広場にポツンと縛られて掴まっている。見張りをしているのは2人というか、2匹というか、2個の……雪だるま。そう、ベルが言っていた、物騒な子たちとは?雪だるま?だったのだ。
 今更ながらなんでこんな状況になってしまったのかと、沈痛な面持ちでクラウスは頭を抱えた。
「雪だるまに拉致監禁されるなんて……(めったにできない経験だ!)」
「大丈夫だよクラウス。ダーリンがきっと助けに来てくれるもん(早く来て、ダーリン)」