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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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飛んで魔導士ルーファス

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 エルザの言葉を耳にしてカーシャが笑う。
「ふふふふっ、さすがは才色兼備の令嬢様だな、正解だ。だが、この装置はお前の想像を絶するハズだ。さあ、やれ、やるのだルーファス!」
「任せておけ!」
 ルーちゃんが念じる、念じる、念じる。すると、念が地面に描かれた配線を経由してカーシャのいる場所へと送られ、カーシャが念を魔導エネルギーに変換し、魔導エネルギーは次の場所で増幅され、放たれる!
 強い念波が学院中を包み込み、気分の悪くなった者は早退へと追い込まれる。
 この装置から発せられるエネルギーは、ただの魔導エネルギーではないため、魔導に耐久力があるはずの生徒たちが次々とやられていく。
 それでも耐えれる者は魔の誘いを受けるのだ。
 気絶しないで残っている生徒たちがいきなり服を脱ぎ出した。
 服を投げ捨て、下着姿になったところで発信源のルーちゃんの念じる力と、生徒たちの下着まで脱いでたまるかという力が火花を散らす。
 生まれたときから強力な魔力に支配された魔界育ちのビビは、そんじゃそこらの人間に比べて魔導耐久力があるので、ちょっぴりテンションが上がる程度だった。
「みんなどうしたの、サバトで乱交パーティーでもする気なのぉ!?(学生の分際でえっちぃ!)」
 この仔悪魔は全く状況を理解していなかった。ちなみにサバトとは簡単に説明しちゃうと魔女の集会のことだ。
 多くの生徒たちは下着を脱ぐ前に精神が尽きて気絶してしまった。そんな中で逆に強い精神力を持っている人の方が損をする。特にエルザ。
「くっ……自分の意思に反して手が勝手に……」
 エルザは上がブラジャー姿になってしまって、今はスカートと格闘中だった。
 ジッパーを下ろしたり上げたり、まるで遊んでいるように見えるかもしれないが、エルザは真剣そのものだった。なのにビビは呑気なことを言う。
「それってノースで流行ってる遊び? アタシもやるやるぅ」
 やると言って自分のをやればいいものを、ビビはエルザのスカートのジッパーに手をかけてた。
「やめろビビ!」
「よっし、そっちが上に上げるなら、アタシは下に下げちゃう」
「違う違う、下げるな脱げるだろ!」
 学院中が大混乱の中、微かな声がポツリと漏れた。
「……ばかばっか(ふあふあ)」
 ワラ人形を持った美少女――じゃなかった、ローゼンクロイツが無表情なまま現れる。
 全く念の影響を受けていないようすのローゼンクロイツは、なんと驚くべき行動を取ったのだった!
 ――地面に描かれている回線を足で消す。
 思わずカーシャは『……あっ』という表情をする。最大の弱点を突かれた。

《4》

 ――念波が消えた。いや、逆流していく。
 蒼ざめるカーシャ。
「クリスちゃん、なんてことしてくれたのだ! 妾の偉大な実験が……うっ(か、体が火照る、ふふっ)」
 立ち眩みを起こしたカーシャはそのまま地面に倒れ込み動かなくなった。
 逆流する念波はカーシャを通して、ルーちゃんの糧となり魔力となる。
「ははははっ、あ〜ははははっ、力が、力が漲ってくるぞ!」
 高笑いをするルーちゃんの身体は激しい光に包まれ、まさにそれは人間イルミネーション。
 素早く着替えを済ませたエルザが素早く刀を抜きルーちゃんに襲い掛かる。
「すまぬルーファス!」
「ふんっ、この大魔王ルーファス様に刃向かう気か!」
 風を切り裂くエルザの一刀をなんとルーちゃんはチョキで挟んで受け止めてしまった。
 残ったルーちゃんの手が素早く動く。
「くらえ秘儀スカートめくり!」
 手と風の力を利用して放たれたルーちゃんの秘儀は、エルザのスカートをふわりとめくり上げ、黒いレースの下着を召喚した。生徒会長色っぽいです!
 ――時が止まる。エルザの思考は一時停止して、その後に訪れる激しい発熱作用。そして、見る見るうちに目じりが上がり、キレる。
「スカートめくりをされるなど末代までの恥。よくも、よくも貴様、許しては置かぬぞ!」
 チョキから抜かれた刀が滅茶苦茶に振られ、ルーちゃんをみじん切りにしようとする。
 暴走エルザVS自称大魔王ルーファスの戦いを傍目から見ているこの3人。どこからか持ってきたちゃぶ台をグラウンドに置いて、ビビとローゼンクロイツとカーシャはお茶を飲みながらドラ焼きを頬張っていた。
「ダーリン頑張って!」
 『ルーちゃんラヴ』と描かれた小旗を振りながらルーちゃんを応援するビビの横でお茶を飲むローゼンクロイツ。
「……熱々青春だね(ふにふに)」
「ふふっ、愛は素晴らしいな!」
 なぜか悶えるカーシャにビビからツッコミ。
「もしかして彼氏いない暦うん千年って感じ?」
「一度も男と付き合ったことのないお子様に言われたくないな(ふふ、トラウマを思い出してまった)」
「ふん、今はダーリンがいるもん!」
「押し掛け女房だろうが?」
「うっ……」
 それを言われると返す言葉がない。
 ローゼンクロイツはドラ焼きを食べながら何食わぬ顔をして、ワラ人形をビビの眼前に突きつけた。
「るーふぁすハ迷惑シテンダロ、コンチキショー!」
「アタシがダーリンに迷惑掛けてるって言うの!? これでも頑張って尽くしてるんだよ!」
 ビビの怒りの矛先、ビビの視線はローゼンクロイツに向けられているが、ローゼンクロイツはあくまでこう言う。
「ボクじゃないよ、言ったのはこのワラ人形のピエール呪縛クンだよ(ふあふあ)」
 なんだかすごいネーミングセンスです。
 一瞬の間、ネーミングセンスに圧倒されたビビだが、すぐにローゼンクロイツに喰って掛かる。
「人形がしゃべるわけねぇだろうが!」
 言葉遣いが乱暴になっちゃったビビちゃんを、ローゼンクロイツが口元だけを動かして嘲笑う。
「……ふっ」
 立ち上がったローゼンクロイツがワラ人形を手放すと、なんとワラ人形が浮いて勝手に動き出した。
「ナンダバカヤロー、コレデ文句アルカ!」
 突然繰り広げられるイリュージョンにビビは目をキラキラと輝かせて喰いつく。時たま垣間見せる純粋で無邪気なところが素敵です。
「すごい、すご〜い、魔法生物なのぉ!?」
 無邪気なガキンチョを冷めた瞳で見つめるカーシャの冷めた一言。
「透明な釣り糸が見えるだろうが。釣り糸で動かしてるのだ(やっぱりガキだな)」
「……ちっ、バレた(ふっ)」
 ローゼンクロイツはあからさまにワザと作った嫌な顔をして、すぐにもとの無表情に戻る。
 イリュージョンのネタバレをされてしまったビビはショック!
「がぼーん! だ、騙された」
 ショックを受けてドラ焼きのヤケ食いをするビビに、ピエール呪縛クンが優しく話しかかる。
「マア気ヲ落トスナヨ、人生山アリ谷アリ、ドン底アリダゼ」
「うるうる……ありがとぉピエール呪縛クン。感動したよぉ」
 芽生える固い絆。二人は互いを見つめ合い、深い恋の渦に堕ちてゆく……なんてことはない。
 いつの間にかお茶から焼酎に飲み物が替わっているベカーシャは、ドラ焼きの代わりに裂きイカを食べながら酔った手つきでルーちゃんたちを指差した。
「ビビちゃ〜ん、こんなところで遊んでないで早くダーリンのとこ行ったらぁん。早くしないと、大事なダーリンをエルザちゃんに寝取られちゃうわよぉ〜ん」