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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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飛んで魔導士ルーファス

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 立ち上がったルーファスは掴んでいる腕を引っ張り、エルザの体を自分の胸に抱き寄せた。
「美しいぞエルザ」
「なにを申すか、頭でも打ったのか!?(こやつ……ルーファスではない!?)」
「いや、わたしは本気だよ、エルザちゃん」
 ルーファスが掛けていたド近眼のメガネを投げ捨てた。
 超美形のルーファスの素顔が現れた。
 しかも、なんか妖艶だ!
 悩ましいルーファスの瞳で見つめられたエルザは、普段の彼女からは想像できないほどに焦りを覚えて、生唾をゴクンと飲んだ。
 この状況を平然とした態度で見守るカーシャはメモを取りはじめた。
「なるほど、実験は失敗したが、思わぬ効果が出だな。あの魔導銃には人格を変える力があるようだ(名前も改めねばならんな)」
 当初の用途とは変わってしまったが、カーシャが大発明をしてしまったことには変わりない。さすが亀の甲より年の功!
 ルーファスとエルザの顔は、男女の距離まで迫っていた。
 本能的に危機を感じたエルザがルーファスを突き飛ばそうと……したのだが、ルーファスの胸を押した感触がマシュマロみたいだ。
 思わずエルザはモミモミしてしまった。
 ま、まさか!?
 顔を赤らめて甘い吐息を漏らすルーファス。
「あぁん、そんなに激しくしないで……」
 凍りつくエルザ。
 そして、沸点を超えたエルザ。
 ものスゴイ勢いでエルザは後ずさりをした。
「る、るる……ルーファス……女子だったのかっ!!(騙された、いつもかけてるグルグル眼鏡はカモフラージュだったのか)」
 この発言にカーシャも驚きを隠せない。
「マジかっルーファス!」
 あまりの衝撃にこの場の雰囲気が凍りつく。地域限定ピンポイント極寒。
 普段は冴えないルーファスたん。
 髪の毛はボサボサの長髪を束ねているだけで、顔の大部分を占めているのはド近眼のグルグル眼鏡。服装はファッションセンスがないから、いつも同じ魔導衣ばっかり着てるし、背が高いのに猫背だし、見るからにダサイじゃないか!
 凍りつくこの場を打ち砕く存在が現れた。盛大に開かれる屋上のドア。中から現れたのは気分上々のビビだった。
「やっほーっ、ダーリン帰ってこないから授業サボって探しに来ちゃった……えへっ♪(はぁと)」
 場の空気が掻き乱される予感。混迷を深める。カオス万歳!
 ルーファスを見るビビの表情が曇っていく。
「いつものダーリンと何か違う(あっ、メガネがないのか、納得♪)」
 そこだけかっ!?
「あ〜ははははっ、当たり前だわたしは生まれ変わったのだからな、大魔王ルーファスとしてな!」
 この場にいた全員が『はぁ?』というマヌケな表情をしてしまった。
 恐る恐るカーシャが言葉を漏らす。
「それってギャグか……?(ふふ、笑えない……ふふふ、腹が……腹がよじれる)」
 思いっきり腹を抱えてうずくまるカーシャ。大爆笑だった。
 手に残る感触を感じながらエルザもショック!
「ま、まさかルーファスが女子だったとは……(風紀が乱れる)」
 イマイチ状況を理解できてない新参者。
「ダーリンが女の子ってどういうことぉ?」
「私は、私は触ってしまったのだ……私よりも豊満なルーファスの胸を……ショックだ」
「ダーリンに豊満なバストが? うっそだぁ〜!」
 ビビはちょこちょこと歩き、ルーファスの前に立つと、両手でガシっ!
 手に伝わるやわらかな中に弾力性を秘めた感触。確認のためモミモミしてみると反応があった。
「あぁん、ビビったらこんなところで……」
「ダダダ、ダーリン!? 女だったの……ってことは結婚サギ!? アタシとの結婚はどうなるの!? ダーリンのばかぁん!」
 取り乱すビビは床に崩れてショック!
 思い思いに床に崩れる3人の女子たち。ひとりは笑い過ぎて瀕死だった。
 そんな女子たちを尻目に自称大魔王ルーファスは去ろうとしていた。
「じゃあな、わたしは世界征服を行って来る、あ〜ははははっ!」
 立ち去ろうとした自称大魔王ルーファスの足首を、ビビがガシッと掴んで離さない。
「ちょっと待って、今思い出したんだけど。昨日ダーリンがシャワー浴びてるのコッソリ覗いたんだけど、胸なんかなかったよ?(股間のゾウさんはパオーンだったけど、きゃは♪)」
 仔悪魔ならぬ、覗き魔だ!!
 大爆笑していたハズのカーシャが何事もなかったように、すっと立ち上がった。
「ふむ、すべてを理解した。赤いコードと青いコードの配線を間違えたことにより、光線を浴びたルーファスは人格だけでなく、肉体も変化してしまったのだ(妾天才!)」
 小さくガッツポーズをしたカーシャ。
 この場にいた全員が何となく状況把握。
 落ち込んでいたハズのエルザが立ち上がる。
「なるほど……女子ということは、ちゃんだな、ルーちゃんだ」
 とりあえずちゃん付け!
 エルザは刀の切っ先をルーちゃんに向けた。
「ルーちゃん、貴様が世界制覇を目論むとあらば、今から貴様は私の敵だ!」
「ダーリンに牙を剥く人間はアタシが許さないんだから!」
 ビシッと立ち上がったビビの指先がエルザを捕らえる。
 やはり状況は混迷を深めてきた。
 女と女の戦いはカオス!
 自分の腕に絡み付こうとするビビをルーちゃんが力強く振り払った。
 コケたビビのスカートがふわりん♪
 あ、くまだ。今日もアイのパンツはクマさんだった。
「おまえみたいな幼児体系はわたしの好みじゃない!」
「がぼ〜ん!」
 ビビちゃん的大ショック!
 ショックを受けたビビはすぐさまカーシャのもとに駆け寄って、彼女の裾を何度も引っ張って目に涙を浮かべる。
「あんなのダーリンじゃないよぉ、へっぽこじゃないダーリンなんてダーリンじゃないよぉ。へたれじゃないと可愛くないから、早く元に戻してよぉ!」
「妾の理論が正しければ、どんな問題も愛さえあれば解決する。つまり、たぶん、きっと、おそらく、ルーファスを想う者が接吻すれば元に戻るハズだ」
 かの有名なカエルの王子様の法則ですね!
「アタシがダーリンにキスすればいいんだよね?」
「そういうことなるな(本当に戻るかは知らんが)
 すげー無責任!
 この二人の会話を横で立ち聞きしていたエルザが胸の奥で何かを決意した。
「ルーファスに接吻すればよいのだな、わかった!」
 屋上から逃げ去るルーちゃんの後を全速力でエルザが追った。
 一足出遅れたビビもこの戦いに参戦。ルーちゃんの後を追う。
 屋上にひとり残されたカーシャは青空を眺めて一言。
「青春だな……ふふ、笑えん」
 こうして、第1回ルーファス争奪接吻大会が幕を開けたのだった!

《3》

 実は授業中だったりして!!
 そんなことお構いなしでルーちゃんが廊下を逃走。その後ろから刀を構えたブロンド美女のエルザが追い、ちょっぴり遅れて仔悪魔ビビが走る。
 その光景を幸か不幸か発見してしまった廊下側の席の生徒は目を丸くしてビックリ仰天。
 さすが頭脳明晰運動神経抜群金髪美少女生徒会長エルザだ。すでに追いつきそうだった。
「待つのだルーちゃん!」
「生憎わたしはイヌじゃないんでな、待てと言われても待たん!」
「なるほどうまいこと言うなルーちゃん」
 感心してどうするんですか生徒会長!