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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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飛んで魔導士ルーファス

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 恒例の質問タイムがはじまる中、獣たちの叫びに紛れてボソッと『死ね』と呟いたカーシャの眉がピクピク痙攣して、教室の気温が零下まで下がった。
 次の瞬間、カーシャの手から放たれる魔導。
「ラギ・アイスニードル!」
 巨大な氷のツララが教室を飛び、後ろの壁に突き刺さった。その近くには無数の穴が開いていた。ツララが投げられたのは今日がはじめてじゃないらしい。
 一瞬にして教室は静まり返った。
 そして、カーシャが重たい口を開く。
「……二日酔いだと言っておるだろう」
 頭を押さえてカーシャが教室を出て行く。カーシャという名の恐怖が去って行く。
 と、誰もが思ったのが、急にカーシャが振り返った。
「ルーファスちょっと顔を貸せ」
 これって死の宣告ですか!?
 言うことを聞かなければ殺されるが、聞いても殺されそうな雰囲気だ。
 クラスメイトの哀れな視線で見送られて、ルーファスは恐る恐るカーシャを追って教室を出た。
 カーシャはかったるそうに頭を押さえている。
「屋上に行くぞ」
「はい?」
「少し大事な話がある」
「大事な話?」
 屋上で大事な話といえば……もしや愛の告白!?
 教師と生徒の禁断の恋。
 愛の先にルーファスが見たものとは果たしていったい!?
 みたいな展開になってしまうのか?
 そんな展開など微塵も期待していないルーファスは、いつカーシャに殺されるかそっちが心配だった。
 屋上につくと、カーシャはいきなりルーファスの胸倉をつかんできた。
「どういうことだ?」
「なにが!?(殺される!!)」
 理由はよくわからないが、やっぱり殺されそうだ。
 しかも、近距離のためにカーシャの爆乳がルーファスのグイグイ当たる。
「聞いたぞ。あの小娘、お前の婚約者らしいな(絶対に結婚詐欺だな)」
「違うよ!」
 すぐにルーファスは否定した。
「違うから、それは向こうが一歩的に言ってるだけで、私はまだ誰とも結婚するつもりなんてないよ!」
「(ルーファスに言い寄る女がいるとは、絶対に財産目当てだ)お前にその気がなくとも、あの娘はお前のことが好きらしいぞ。しかも、あの娘……悪魔だな?」
「……カップラーメンから出て来たんだ」
 ルーファスは事のあらましを説明しようとしたが、その説明を遮るがごとく、気高い女の声が響いた。
「あの転校生、やはり悪魔だったのだな!」
 屋上に姿を見せた第三者。
 ブロンドの髪の毛を靡かせ、その女はそこに立っていた。

《2》

 陽の光を背に浴びるブロンドの美しい女。
 クラウス魔導学院生徒会長エルザ見参!
 しかも、エルザの手には鞘から抜かれた刀が握られていた。なぜか戦闘モード。
「私は悪魔を決して許さない。悪魔は父を殺し、今度はルーファスまでも誘惑するつもりなのかっ!」
 と、その前に――エルザはカーシャに向かって剣を振り下げた。
「この淫乱教師め、ルーファスから離れるのだ!」
 離れるどころかカーシャはルーファスを人質に取った。
「ルーファスと妾は一心同体じゃ、一緒にいてなにが悪いのだ!」
「一心同体だと!!」
 大声をあげてエルザは顔を真っ赤にした。
「一心同体とはどういう意味だ!」
「ふふ、肉体的にあ〜んな関係という意味だ。ろくに男と付き合ったこともないお主にはわからんだろうがな!」
 モーソー爆発!
 エルザの脳では処理しきれず、体が火照ってオーバーヒートした。
 ルーファスが困った表情でカーシャを見つめる。
「誤解を招くような言い方しないでよ」
「お前が妾の大切なモノを奪ったことには変わりないだろう」
 大切なモノを奪った。
 その言葉はエルザのモーソーに拍車をかけた。
 エルザの胸の奥に木霊する呪文。
「(ロストヴァージン!)」
 ま、まさかルーファスとカーシャがそ〜んな関係だったなんて……。
 ルーファスがカーシャから奪ったモノの真相は、魔導士ルーファス第5話「凍える記憶」を読んでね♪
 と、いう告知もはさみつつ、ショックを受けてエルザが動けなくなってるとこに、カーシャの必殺技が炸裂。
「ルーファスロケット発射!」
 カーシャに豪快に投げられたルーファスは直球勝負でエルザに激突。二人はすってんころりん豪快にコケた。
 地面に倒れたエルザの上に覆いかぶさるルーファス。
 手に伝わるやわらかい感触に思わずモミモミしてしまったルーファス。
 そして、状況把握でフリーズするルーファス!
「うわぁあーっごめん、ごめん、ごめんなさい!!」
「……いいから早く退いてくれ」
 お約束の行動。ルーファスはエルザのバストを鷲掴みにしていた。しかも、モミモミしちゃったし。手に残る感触が忘れられない。
 ルーファスを押し退けて立ち上がったエルザは素早く刀を構える。
 カーシャの姿はどこに!?
「ここだ(ふふ、勝った!)」
「なにっ!?」
 振り向きざまのエルザの眉間に銃口が突きつけられる。
 ファンシーなデザインのその銃はオモチャにしか見えないが、侮るなかれ!
 カーシャはなんか長生きしてるせいか、魔導具作りにかけては奇抜なほどに才能を発揮できるのだ。
 そう、これは魔導銃(マガン)なのだ!
 カーシャの早口解説がはじまる。
「この魔導銃は物体を一瞬にして?うさぎしゃん?にしてしまうミラクルな魔導具――その名も?ピンクバニーちゃん(試作品)?だ!(ふふっ、決まった)」
 カーシャはピンクが大好きです!!
 と、いうわけで、引き金にかけた指が微かに動いた瞬間、そのスピードよりも早くエルザの一刀が煌く。
 魔導銃がクルクル回転しながら放物線を描く。
「ぐっ……妾の腕が……あるな」
 斬られたと思ったカーシャの手首は袖に引っ込んでいただけだった。
 魔導銃が地面に落ちた衝撃で誤作動を起こす。
 そして暴発!
「うぎゃぁぁぁっ!」
 惑星ポポンガにいる緑色の両生類がダンプカーにひかれたような悲鳴。
 つまり得たいの知れないほどの叫び声だった。
 カーシャとエルザは一時休戦をして、その奇声がした方向を振り向いた。
 ぎゃぁぁぁぁぁっ死んでるぅぅぅぅ……かも。
 そこにはカエルのようにへばっているルーファスの姿が!?
 慌てたエルザはルーファスを抱きかかえた。
「大丈夫かルーファス!?」
 続いて平然とした顔をしたカーシャが一言。
「失敗だな(うむ、きっと配線ミスだ)」
 カーシャの理論上では、ルーファスは一瞬にしてピンクのうさしゃんになるはずだった。が、どうやら内部の配線を間違えたことに気づいたようだ。
 身動き一つしないルーファス。やっぱ逝きましたか?
 地面に膝を付き、歯を食いしばるエルザ。
「くっ、すまないルーファス、私のせいで……」
「殺人なんて大したことではない(あっはっは、見ろ人がゴミのようだ!!byメガネ)」
「もとはと言えば貴様が悪いのだろう!」
 立ち上がろうとしたエルザの手を何者かが掴んだ。
「ルーファス!? 生きていたのかっ?」
 驚くエルザの目の前でルーファスがゆっくりと身体を起こす。
 その姿、いつもルーファスの比べて凛々しいぞ!
「はははは……あ〜ははははっ!」
 こんな高笑いをするルーファスなんて誰が想像しただろうか!
 へっぽこルーファスからは想定できない豪快さ!