レイニーガール
まるで太陽の姿を見ようとしないかのように、視線を泳がせ雲を、世界を暗く覆い込めてしまう冷たさを求める。
「あ、虹だ。お姉ちゃん、虹だよ!」
そんな彼女の目に飛び込んだのは鮮やかな虹。
冷たく悲しい雨を耐えたものの頭上にだけ輝く七色輝だ。
空は雨の上がった世界を照らし彩る。
――雨は……止んだんだ。
――もう悲しみに嘆く人は居ない。
彼女を打つのを最後に雨は止んだ。
魔女と、幽霊と、様々な形で罵られ、なじられた彼女に幾度目かの涙が浮かぶ。
彼女は声を殺して泣いた。
しかし、雨は降らない。
彼女の瞳を濡らすそれは悲しみではないからだ。
悲しみの癒えた世界で空は青く高く澄み渡る。
「綺麗ね、虹」
七色の光を潤んだ瞳に映しながら少女は、優しさをくれた少年に声をかける。
「うんっ!」
元気よく応じた少年は、畳んだ傘を振り回しながら水溜りを跳ね、避けていく。
すこし離れたところで少女を振り返ると、大きく手を振る。
「じゃあね、お姉ちゃん」
少女は、作り方を忘れかけていた笑顔で少年の背中を見送る。
少年の背中は小さくなっていき、虹のトンネルへと消えていった。
涙を拭いた彼女は空を見上げた。
突き抜けるような青空を。
――Fin