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漆黒のヴァルキュリア

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第一章 戦乙女とお供のカラス 4



「……いやまぁ、いいんだけどよ……」
 報告を受けた俺は、この先に待つ困難を予想しきれないでいる。いや、困難にぶつかるであろう事は予想済みだ。問題は、その困難がどれほどのモノかという事。俺に対処出来るレベルなのか? という事だ。それになにより、その前に様々な懸念材料がある。
 まずは、エナの選択基準。鉄の馬? バイクだろ? それに乗ってるってのは、ヤンキーか? ヤンキー、イヤな響きだぜ。過去のあの戦争は、元軍人の俺ですら間違いだったと思ってるが、あの戦争での最大の汚点は、鬼畜どもに勝利させたって事だ。思い上がった日本は負けて正解だった。だが、米英を頭に乗らせたのも間違いだった。
 まぁ、そんな事はどうでもいい。だが、嘆かわしいのは、日本の少年たちが米国文化に毒され、アホな格好をして走り回っているという事。そして、あろうことか――
「……勇者認定だと? 群れなきゃ何もできんヤンキー小僧をか? 有り得ないだろそれは……」
「カブトムシよりはマシなのでは?」
 俺の呟きに、左肩の上のフギンがそんな言葉を返してくる。
「いやまぁ、俺も全否定するつもりはないが……」
 ――ひょっとすると、万分の一くらいの確率で、本当に使えるヤツかも知れんしな――
「しかしだな、他にいくらでもあるだろ? この平和ボケした日本にも、だ。自衛隊は、ゴッコ機関だから除外するとしても、一線で活躍してる警官とか、消防や海上保安庁のレスキューだとか……なんで、そういかないのか」
 言ってる途中で虚しくなり、俺は言葉尻を溜め息で締めくくる。
「……まぁ、そうなのですが……エナですよ? 黒騎士様」
 一瞬の沈黙。左に視線を動かすと、フギンと目が合った。
「……ああ、うん、そうだな。エナだったな……」
 どんなに理不尽であっても、納得出来るその答。
「まぁいい、どうせ直接は手伝えんのだからな。しばらく任せてみるか……」
「そうですね……」
 俺とフギンは、涙ながらに頷き合った。