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漆黒のヴァルキュリア

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 正に日の恵み。万物を育む力。
 天照は俺たちを元気付けると、恵那に向き直った。
「恵那も元気そうやねぇ。フレイヤはんも、良くしてくれてはるみたいやし」
 穏やかに言葉をかける天照。そんな彼女の様子に、俺はふと疑問が湧いた。
「……あの、もしかして……フレイヤの姐さんと、知り合い……なんですか?」
 俺の問いに、二人の女神は顔を見合わせて苦笑を見せた。
「ええ、ウチら三人、茶飲み友達なんどすえ? 半年にいっぺんは、お茶会してますのや」
 そんな屈託のない答えに、今度は俺と恵那が顔を見合わせる。
 広いようで意外と狭い、神々の世界。しかし、一つだけ納得できる事もあった。
「……ああ、だからフレイヤの姐さん、関西弁なのか……」
 俺の呟きに、二人の女神がクスリと笑う。
 だが、不意にその和気藹々とした空気に水を差す者がいた。
「だったら、なんでオレが勇者探すのジャマしたんだよっ?」
 そう言ったのは、恵那の別人格――エナだった。気付けば、髪の色も金色に戻っている。
 そんなエナの言葉に、異形の女神は頬を膨らませた。
「フレイヤはんには、ウチは言うたもん。ウチの管轄する土地では、勇者探しは御法度やで、って。大体、恵那の例があって、それ知ってて勇者探しやらせとるっちゅう事はやな、別な目的があるっちゅうこっちゃ。ウチもフレイヤはんの性格知っとるし、それでも敢えて送ってきたっちゅうことはやな、ジャマしてくれっちゅー事やねん。まぁ、それに気付いたんは、カラオケ勝負のちょっと前やったんやけど……ウチも退屈しとったし……」
 最後の本音の部分で、俺とエナの額に青筋が浮く。
 そして、今度は天照が言葉を繋いだ。
「実は、フレイヤはんから連絡ありましてなぁ。あんたはん達が、もし消滅しそうになったら、助けてあげて欲しい言うことでしたわ。……もっとも、助けなあかんかったんは、フワティちゃんと恵那で、正直、驚いてますけどな? ほんまに、あんたはん、大したお人やわ」
 天照がそう言うと、異形の女神も頷いていた。
 そして――
 不意に、異形の女神が四つの手の指を回し始める。
「ウチ……ホンマに惚れてもうたかも……」
 言って、俺の顔を見た彼女は、真っ赤になって頬を掻いた。
「あ……えーと……」
 リアクションに困る俺。確かに、彼女は美人だ。仕草も可愛らしいとも言える。何より女神だし。
 ――しかし、四本の腕は、ちょっと好みからハズれるんだが――
 などと考えていたその時。
「響七郎のバカ〜〜〜っ! なにこんなヤツたらし込んでんだよ〜〜〜っ!!」
 突如、そんな言葉と共に右頬に鋭い打撃を受け――
 ――俺の意識は一気に刈り取られた。

 ――いや、エナか今の? つか、たらし込んだ覚えはミジンコほども無いんですが……? ――