MIROKU
――その向こうに、蒼い海と白い砂浜があった。
『施設』の向こうにそれが見えた。杉の森の中に砂浜が見えたのだ。いや、森の風景と砂浜の風景が入れ替わったと言ったほうが正しい。
ココロは呆然とその砂浜と海を見ていた。
幻覚かもしれない。
しかし、ココロはその幻想から眼を離せずにいた。
「あら、生きている人がいますわね。それも主犯格のような人が」
作業、思考を中断した彼の後ろから、女性の声がする。
振り向くと、森を背景とした瓦礫の上に少女の焼死体が立っていた。
その赤黒くただれた顔の奥に新鮮な目がぎょろぎょろと動いている。
すぐさま皮膚が新生する。火傷の殻が破れ、赤子のような肌が見える。
「あら、何故生きている?という顔をしていますわね」
全ての皮膚が生まれ変わり、火傷の殻がすべて落ち、艶かしい裸体が見えた。
「その答えは簡単ですわ」
ちりちりと焼けていた髪が抜け落ち、髪が頭皮から生えてくる。
「わたくし、完全な不死を得たようですの」