MIROKU
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彼、ココロにとって、仕事というのは『施設』を破壊するだけの単調な作業でしかなかった。
不死者を際限なく研究し造りだす『施設』は、これはまた世界中に際限なくはびこっていた。
それを一つ一つ特定し、大規模な破壊工作を仕掛け不死者もろとも殲滅する。それを数十度繰り返えしてきた。
今回破壊指令が出た『施設』の番号は01971、つまり千九百七十一番目の『施設』。
入団した頃の大義も初心も忘れた。メモリーも凄惨なものばかり。形骸化したその身体は作業に没頭することで、存在することを許されていた。
ココロは作業中、ふと思う。
――今日の夕飯はなんだろうか。
これが彼、ココロの日常だった。
高性能有機爆薬、設置完了。あとは出来る限り爆風が来ない所まで退避し、ボタンを押すだけ。
洗練された身体の運び、常に監視カメラの死角を突き、赤外線センサーも巧みに避ける。
そして、外の森に身体を隠し、ボタンを躊躇せず押した。
爆風の衝撃波がココロの体を強く打ちつけ、そして爆発の中心点に向かって突風が吹く。
数分、風は止まなかった。
風が止み、おもむろにココロが立ち上がる。『施設』の中を確かめるためだ。
ベレッタ散弾銃を持ち、セーフティを外しながらゆっくりと歩き出す。
向かう途中、爆風で飛ばされたのか、一人の研究員が蠢いていた。
ココロは素早く銃口を彼の頭に向け、発砲した。
研究員の命は、散弾銃の爆発散弾により頭が弾けて停止した。
不死者は頭に高火力。これは彼が所属するDURLの鉄則だ。
そして、不死者に情けをかけてはならないと言うのも、DURLの鉄則だ。
それに従い仕事をこなす。ココロは『施設』の外を回り、数人の生き返りそうな罪人を殺し、もう他にいないと判断すると『施設』の中に入った。
『施設』内ではまだ火が残っている場所があった。実験場のような場所、何かを収容する場所、食堂やただベッドが並んでいる部屋もあった。
建物自体の強度が高いのか、基礎骨格や柱は大きくヒビが入る程度。壁は全て吹き飛んでおり、そこかしこに致命傷を負って死んでいる人の姿が見えた。
ココロはそのヒトの一人一人を死んでいるか確認する。生きていたならば、容赦なく殺した。
ひとしきりその作業が済んだあと、壁が無くなり大部屋と化した『施設』を見渡す。
ココロは眼を疑った。