MIROKU
クスクスと、絹のように細く、黒真珠の闇を持つ髪を生やした少女が笑った。
完全な不死などあるはずが無い。それは既に証明されている。
それを知っているココロの反応は早かった。
彼女の頭に銃口を向け、発砲。倒れても発砲、発砲、発砲。彼女の頭は跡形も無く破壊された。
「……フン」
完全な不死を得たと言った少女は完璧に死んだ。ココロはそれを見届けてから後ろに向き、立ち去ろうとした。
「――――あら? 何処に行きますの?」
――――ありえない、とココロは思うしかなかった。
「だから言ったでしょう?」
振り向くとそこには、
「完全な不死を得たようです、と」
さっきと同じ顔をした彼女が立っていた。
「な――」
「それよりも、貴方、ここを破壊したということはDURLの方でしょう?」
ココロの驚く顔が面白かったのか、少女はまたクスクス笑う。
そして、ココロに近づく。ココロの胸ほどの身長しかない彼女は、ココロの顔を見上げ言った。
「わたくしを捕まえて早く此処からでませんの? わたくし、もう此処は飽きました」
なので、デートのエスコートをしてくれませんかしら、そう彼女は言ったのだ。
「お前、何を言って「お前、じゃなくてわたくしのことはミロクと呼んでくださいな」
ミロクと名乗った少女は強引にココロを黙らせ、にっこりと笑いつつ見えない圧力をかける。
「……ミロク、でいいんだな?」
抵抗を示さないミロクに拍子抜けしながらも、拘束用の特殊手錠と発信機であり懲罰機である首輪を手に取る。
「はい」
「不死微小機械使用の現行犯でお前を逮捕する」
チャキ、とココロは手錠を構える。
「お前じゃなくてミロクですわ」
変なところでミロクはこだわり訂正を求めた。
「ミロクを逮捕する。これでいいか?」
「はい、よろしくお願いしますわ」
ミロクは微笑みながら、ようやくココロの目の前に両手を差し出す。右手に、666と焼印されていた。
ココロは裸の少女に手錠をかけ、首輪をつけた。……眼を別の方向へ向けながら。