わが家の怪
─九─ 《イケメン》
これまたいつの間にかわが家にやってくるようになった存在。
今は来なくなったが、数年前まで、夜8時頃になると玄関から入ってきていた。
最初はなにやら得体の知れない気が玄関の方からしてきて、誰かが来たのかと思っていってみるが誰もいない。
もどって見ると、部屋の中にいるのだ。
そして、わたしが台所に立つと左側にぴったりと寄ってくる。
「少し、離れてくれる?」
と言うと、ちゃんということを聞いて、ちょっと後ろに下がってくれるけれど、何がしたいのかさっぱりわからない。
(とはいえ、たたられるのも困るけど)
彼は若い男で、きちんとスーツを着てネクタイを締めている。なかなかのイケメンだ。
このイケメンくんには、次男のガールフレンドのAちゃんも遭遇している。
ある時、Aちゃんは次男に頼まれて、忘れ物を部屋に取りに来た。
その時家には誰もいなかったが、Aちゃんは一声かけて2階に上がり、頼まれたモノを持って降りてきた。
そして帰る時にも「おじゃましました」と言って何気なく台所の方を見たのだそうだ。
すると、スーツ姿のイケメンのお兄さんが、笑いながら手を振っていたという。
台所が好きな、スーツを着た幽霊というのも、なんだかねぇ……。