わが家の怪
─拾─ 《得体の知れないモノ》
比較的最近あったわが家の怪。
夏の蒸し暑い曇った日の昼下がりのこと。
わたしはPCに向かっていた。
次男は出かける前にシャワーを浴びるといって風呂場に入っていった。
しばらくして、階段をとんとんと数段上る音が聞こえてきた。続いてぴしゃっと障子を閉める音が。
「あれ? いつの間に?」
わたしは次男が二階に上がったのかと思ったが、風呂場では相変わらずシャワーの音がしている。
──じゃあ、今の音はなに?
わたしが陣取っているPCの机がある場所は、家のちょうど真ん中で、家中が見渡せる。だから、風呂場から出てきた次男がわたしに知られずに2階に上がることは不可能なのだ。
風呂から出てきた次男に、そのことをいうと、次男は気味悪がった。
一緒に2階に上がってみると、次男の部屋の障子は開いていた。
では、さっきの音は?
次男が出かけてから、わたしは姪に電話をした。
姪は霊感が強い。
「わたしは幽霊探知機じゃないんだから」
と言いながら、姪はすぐにやってきた。
二人で2階に上がる。
階段を登り切らないうちにぞわぞわした気分になって、全身を悪寒がおそってきた。
そして、2階の廊下に立つと、二人とも見る間に鳥肌が立った。
「やだ。なに これ」
腕をさすりながら姪が言った。
「すごく悪い気だね」
わたしも鳥肌のたった腕をさすった。
けれど、その気配はそこでなくなっていて、姪にも正体はわからなかった。
どうも階段から2階の廊下は霊の通り道のようなのだ。
これまでも何度か、足音や人の通る気配を感じたりしている。
普段は気にもとめないが、このときの気は悪気だったので、しばらくの間清め塩を置いておくことにした。
それにしても、得体の知れないモノが一番怖い。