わが家の怪
─八─ 《ふとん》
子どもが大きくなり、2階にある二部屋を二人の子どもたちにそれぞれ使わせることにしたので、わたしたち夫婦は下の部屋で寝ることになった。
それまでもその部屋で寝ていたことはあったが、別段おかしなことは起こらなかった。
ところが、夫が仕事の都合で帰らなかった夜。
一人で階下の部屋に寝ていたわたしは、明け方近くに人の気配で目が覚めた。
廊下の方から誰かがそっと入ってきたのだ。
障子は開いていない。
【それ】は、すうっと通り抜けて入ってきた。
そして【それ】はわたしを跨いで反対側へ来ると、布団に入ってこようとしたのだ。
これにはビックリして、わたしは掛け布団をぎゅっと自分の身体に巻き付けて、
「入ってくるな! あっちへ行け!」
と、念じ続けた。
ほんの数分の間だったと思うが、【それ】がいなくなるまで身体を硬くして拒み続けていたので、どっと疲れてしまった。
【それ】の正体は未だにわからない。
男だったのか、女だったのかさえ……。
【それ】は、今でもときどきやってくる。
決まって夫が帰らない夜に。
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防衛策として、わたしは電気をつけたまま寝たり、明け方早い時間に起きてしまったりしている。