わが家の怪
─番外篇─ ≪こっくりさん≫
どなたも一度は経験がおありだろう。
「こっくりさん」
最初に流行ったのは中学生の頃だった。
休み時間にクラスメイトが画用紙を広げてなにやら呪文(?)のようなものを唱えながらやっていたのだ。おもしろがってその呪文のことばを教えてもらい、友だちと何度もやってみたが、指を乗せた硬貨がすいすい動くのがなんとも不思議で楽しかった。
占うのは「将来どんな仕事に就くのか」とか、「どんな人と結婚するのか」などというたわいもないものだった。
もちろんはやりのモノ。数ヶ月後には廃れ、いつのまにか誰もやらなくなっていった。
次に流行ったのが高校の時。というか、誰かが思い出しては「やってみよう」という流れになり、そのたびに呪文を知っているわたしが引っ張り出された。
なぜか、わたしがやると硬貨がよく動くのだ。あたっているかいないかは知らないが。
その頃になると、こっくりさんでの心霊体験などの話を聞くようになり、あまりいいものではないと思ってはいたが、自分の周りにはそんなことは起きなかったので、わたしは続けていた。
ある冬の夕方。
だれとこっくりさんをやっていたのか、まったく覚えていないのだが、そのときも、他愛のないことばかりを占っていた。いくつか質問をした後、なにげなく「10年後の今頃、わたしは何をしていますか?」と聞いた時だった。
それまですいすいと動いていた硬貨の動きが鈍くなり、止まってしまったのだ。
もう一度同じ質問をすると、ゆっくりと硬貨は動きこう答えた──
ソ・ウ・シ・キ・ヲ・シ・タ
わたしは思わず「誰のですか?」と尋ねた。しかし、その後硬貨はぴくりとも動かなくなってしまった。
しばらく沈黙したままでいたが、だんだん背筋がぞくぞくしてきたので、やめることにした。けれども、硬貨が動かないのでおしまいのおまじないもできないままやめてしまった。
以後、こっくりさんはやっていない。
その後も、こっくりさんは周期的に流行した。
友だちの子どもなどが小学生の頃こっくりさんの話を聞いて、わたしに呪文を知っていたら教えてと請われたこともしばしばあった。もちろん、絶対に教えたりはしない。
そう。10年後の冬。わたしは父の葬儀に出た。こっくりさんの予言ははからずも当たったのだ。