隠れて恋人関係
彼女はため息した後に言った。
「……なんで無視するのよ」
「え?」
「学校で!なんで無視するのよ!」
「なんでって……お前が『部活を引退するまでは、付き合ってることを隠しておきたい』って言ったからだろ?」
「隠しておきたいとは言ったけど!無視しろとは言ってないでしょ!」
「そうは言ってもな……そばにいるとぼろが出そうで怖いんだよな」
「いままで友達として仲良くしてたんだから、あれじゃ逆に不自然でしょ!」
「んー、まあそうなんだけど……自分の欲望を抑えつける自信がなくて」
「なによ、欲望って?」
言っていいのかな、と少し考えたが、俺は本音のままに答えた。
「いや、急にキスしたりとか、抱きしめたりとか、イチャつきたくなるというか」
彼女は顔をぼっ、と赤面にさせる。
「バ、バカじゃないの!」
「俺はバカだねぇ」
彼女の動揺ぶりについにやけてしまいながら答えた。
「と、とにかく!明日からは普通に話しかけてよね!」
「わかったよ」
彼女はもじもじと身をよじって、俺に呟くように言ってきた。
「……その、は、話ぐらいできなきゃ、寂しすぎるでしょ」
「………」
あの意固地な彼女が見せる寂しそうな表情に俺はやられました。
彼女を頭を優しく撫でながら答えた。
「ああ、ごめん」