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Happy New Year!

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「やったあ! 今年は大吉だよお!! 」
「……」

 吉野の喜ぶ声が遠くに聞こえる。大吉なんてそんなに珍しくもない。大仰に騒ぐようなことじゃないんだ。俺の直面している問題に比べれば瑣末な事柄だと断定できる。

「あれ? どうしたの?」

 吉野が近寄ってきて俺の手にしたおみくじを見ている。

「わぉッ! スゴイねえ、大凶じゃんッ」

 そうなのだ。俺が引いたおみくじは大凶だった。凶すら見たことがなかったのに、よもや大凶を引く日が来るとは考えていなかった。

(迂闊だった……)

 俺は常に行動を起こす前に最悪の結果を想定しておく。だから、どんな状況になっても冷静に対応できるのだ。それなのに今回は心の準備をしないまま行動してしまった。

「ねえ、貴志?」

 でも、最悪な結果を想定するといっても限度がある。今この瞬間に大地震が起こったりして死んでしまったりする可能性もゼロではない。だが、そこまで心配していたら何もできなくなってしまう。だいたい、大凶なんてなんで入っているんだ。凶はともかく大凶なんて入れる必要なんてないんだ。お参りした時点でその人の運勢は上がっているはずなのだから。大凶になる可能性があるのはお参りもしない不信心者だ。そして、不信心者は神社に来ることはない。だから、神社のおみくじに大凶を入れる必要はないのだ。

「ちょっと、大丈夫?」

 いや、今あれこれ考えても仕方ない。俺の手に大凶のおみくじがあるのは現実だ。悪いおみくじなら神社に用意された場所に結んで帰ればいいんだ。書かれている内容をしっかり読んで気を引き締めて今年を過ごせばいい。それだけのことだ。


作品名:Happy New Year! 作家名:大橋零人