Happy New Year!
俺と同じようにこの神社に来る者の大半が徒歩だから、駐車場に来る人は多くない。
どの屋台も非常に暇そうで、これで商売になるのかと他人事ながら心配になった。
「焼き鳥とたこ焼きと焼きそばかあ…… 迷うなあ、いっそのこと全部食べるっていう手もあるよねえ」
「ダメだ。ひとつだけにしろ」
「え〜ッ?! ひとつじゃ全然足りないよ。育ち盛りなんだから」
「いや、女子だったら食べ過ぎを気にする年頃だろ」
「大丈夫だよ。男の子はガリガリ女よりポッチャリ系の方が好きなんでしょ?」
「お前の場合はデップリ系への道をひた走っているように思えるけどな」
「も〜 仕方ないなあ。じゃあ、わたしのスレンダーボディを維持するために ふたつでいいよ」
そう言って吉野は俺から財布を奪い、焼き鳥と焼きそばを購入し、ついでに自販機でミルクティーも買っていた。
屋台の近くに設置されたベンチに座ると、焼き鳥のパックを渡される。
「半分ずつ食べようね」
「ああ、分かった」
パックには6本の焼き鳥が入っていたから3本を食べた。こういう所で食べると特別に美味しい感じがするものだ。
「はい、じゃあ交換」
そう言って3分の1くらいの量になった焼きそばと使っていた割り箸を渡してくる。
平静を装いながら焼きそばを食べ始めたが、味なんてよく分からない。
その間に焼き鳥を食べ終えていた吉野はミルクティーをグビグビと飲んで、笑顔で飲みかけの缶を差し出してきた。
それもクールに受け取って一気に飲み干す。
「じゃあ、おみくじ引いて帰るか」
「いやいや、その前にお守りを買っちゃおうよ」
「無一文のヤツがなに言ってんだ」
「大丈夫だよ、お金はタップリあるから」
そう告げたコイツの手には見慣れた黒い財布があった。
「それは俺の財布だろうがッ、さっさと返せ」
「まあまあ、このお金は決して無駄にはしないからさ」
「すでに無駄な出費をしてるじゃねーかよ」
「だって、お守りが無かったら今年はボロボロ人生になっちゃうんだよ。それでもいいの?」
「……」
家から近いんだから後でまた来ることも可能だけど、確かにお守りはお参りした時に頂くのがベストだろう。
「……分かったよ。お守り代は後で返せよ」
「うんうん、OK!」
実に分かりやすい空返事をしながら吉野が元気よく立ち上がった。
作品名:Happy New Year! 作家名:大橋零人