小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

Happy New Year!

INDEX|5ページ/13ページ|

次のページ前のページ
 

 神前に立った俺は姿勢を正してから会釈をして賽銭を投じる。以前ならこの後で鈴を鳴らすのだが、数年前から年始になると鈴は取り外されていて、賽銭箱も通常より大きい物が設置されるようになった。一度に多くの人間が参拝できるように効率化された結果だろうが、子供の頃から初詣に来ていた地元の人間としてはちょっと残念だ。
 深々と二拝した俺がチラリと横を見ると、やっぱりまともなお辞儀をしていない。神前での礼は90度が常識だ。だが、これを忠実に実施している人は少ない。まあ、コイツは俺の十倍の賽銭を納めているから神様も見逃してくれるだろう。
 柏手は両手をキチンと合わせるよりも少しずらした方が良い音がする。ここで重要なのは意識を集中して祈りの言葉を心の中で唱えることだ。後ろで多くの参拝客が待っているのは分かっているけど、これを疎かにしてはお参りの意味が無い。

 祈りを終えた俺が最後に深くお辞儀をして隣を一瞥すると知らない横顔に変わっていた。

「おっそいよぉ」

 拝殿から少し離れた場所で待っていた吉野が文句を言う。

「これが初詣のメインイベントじゃないか。キッチリやらなきゃダメだろ」
「わたしだってキッチリバッチリやってるよ。願い事10個言ったからね」

 誇らしげに胸を張る我が幼なじみ。

「10個? あの短時間で?」
「うん。常日頃から早口お祈りは練習しているから」
「なんでまた そんな酔狂なことしてんだ?」
「もちろん、いつ流れ星を見てもいいように」
「……」
「流れ星をなめちゃあいけないよ。すっごく速いんだから」
「そりゃ大変だな」
「でねッ、今回はお参りのためにスペシャル10連続バージョンを練習してきたんだよ。いやあ、昨日の夜は大変だったなあ。夜中の3時くらいまで練習してたもんねえ」
「その結果が寝坊か」
「仕方ないじゃない。これが初詣のメインイベントなんだから。キッチリやらなきゃダメでしょ?」
「……神様がちゃんと聞き取れていればいいけどな」


作品名:Happy New Year! 作家名:大橋零人