Happy New Year!
コイツは生まれた時から近所に住んでいる幼なじみだが、こうして二人で初詣に来たのは初めてだった。落ち着いて見ると、この季節にしてはずいぶん薄着の格好をしている。上は白いパーカーで、下は薄いピンクのミニスカート。見ているこっちが寒くなる。
「お前、寒くないのか?」
「ああ、大丈夫ッ。走ってきたから身体ポッカポカだよ」
「走るなって言っただろ。普通に歩いていたってお前は危なっかしいんだから」
「大丈夫だって。貴志はホントに心配性だよねえ」
「お前の大丈夫ほど信用できないものも珍しいからな」
初詣の列は10分程で神前に立てるくらいだったので、隣に立つコイツが年始に起こった出来事をご機嫌に話しているうちにすぐ目的地が迫ってきた。
「貴志はお賽銭いくら入れるの?」
「ああ、俺はいつも五円だな」
「うわあ、セコいねえ。それじゃあ神様もお願いを聞く気になれないんじゃない?」
「いや、五円玉派の人は結構多いんじゃないか? 「ご縁がありますように」っていう語呂合わせでさ。なんとなく小銭の中でも五円玉って色やフォルムがお賽銭に合っている感じもするし」
「ふうん、そっか。じゃあ、私も五円でいいや」
そう言って差し出された手をじっと見つめる。
「……たぶん俺の勘違いだと思うんだけど、五円をよこせと言ってんじゃないよな」
「だって、わたしお財布持ってきてないんだもん。急いで来たからさあ」
偉そうな態度の粗忽者は当然の権利のように俺の金を略奪しようとする。
「はらほら、早くしないと順番が来ちゃうよ」
「ったく……しょうがねーな」
財布の中を見ると、五円玉は用意していた1枚しか無かった。
「ああ、ダメだ。お前の分の五円玉は無いな」
「じゃあ、五十円でいいよ」
「……」
作品名:Happy New Year! 作家名:大橋零人