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Happy New Year!

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「最悪の初詣だ……」
「だからあ、大丈夫だって言ってんじゃん」
「お前の大丈夫は信用できないって言ってるだろ。お前は大丈夫を安易に連発し過ぎだ」
「貴志は滅多に大丈夫って言わないよねえ」
「ああ、この世に絶対大丈夫なんていう事柄はほとんど存在しない。無責任なことは言えないからな」
「違うよ。大丈夫だから大丈夫って言うんじゃない。大丈夫って言うから大丈夫になるんだよ」
「……そんなの気休めじゃねーか。何の根拠も無い」
「根拠はあるよ。だって、去年もわたしは同じことしてるんだから」
「は?」
「去年、わたしも大凶だったんだ」
「……」

 おそらく大凶の出る確率なんてメチャクチャ低いだろうに。ある意味で俺達は奇跡的な二人だと言えるのかも知れない。

「その時も焚き火で燃やしたのか?」
「うん。さすがにびっくりしちゃってさあ、持っているのが怖くなって燃やしちゃった」
「悪い運勢のおみくじは神社に結んで帰ればいいんだ。焚き火で燃やすなんて罰当たりなことはするな」
「いやあ、わたしもちょっとマズいかなあと思ったんだよねえ。もしかしたら悪いことが起こるかもって去年はずっと心配してたんだよ」
「……そんな話全然聞いたことなかったな」
「だって、貴志に相談したら、わたし以上に心配しちゃうじゃん」

 そう告げたコイツの顔はいつもより少しだけ大人びて見えた。

「でもね、わたしにとって去年は人生で一番ステキな年になったんだよ」
「……」

 満面の笑みを浮かべて見つめてくる吉野に俺は背を向ける。

「まあ、やっちまったものは仕方ない。そろそろ帰るか」
「うんッ」


作品名:Happy New Year! 作家名:大橋零人