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狂い咲き乙女ロード~2nd エディション 愛ゆゑに人は奪ふ~

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 その日は朝からひどい雨だった。でもおかげで男子の体育が屋内で自習になったのは幸いだったと言えよう。昼休みの内に森さんとの十分な打ち合わせは済ませてある。後は計画を実行に移すだけだ。
 僕たち男子は体育館で自由に競技を選んでやっていていいと言われていた。森さんの話によると女子は柔道場で組体操の練習をやるそうだ。
 大半の男子たちはちょうどネットが張ってあったことから、バレーボールに興じ、一部の面倒臭がりたちは隅で寝転がったり、雑談に興じていたりした。
 珍しいことに千秋もバレーに参加せず、隅でぼんやりと試合を眺めていた。これは助かる。どうやって連れ出そうかというのが簡単にクリア出来る。僕は何気に無い調子で話しかけた。
「佐藤君、ちょっといいかな」
「ふえっ」
 いや、そんなに驚かなくても。別に取って喰おうってわけじゃ…あ、それは駄目だ。だってこれから喰うしな。
 うん、でも可愛いリアクションだ。やっぱり僕の好みだということがよくわかったよ。
ジャージ姿もいい。体操服の胸の所に縫い付けられた『2―1 佐藤(千)』というゼッケンがまたその魅力を引き立てるのに一役買っている。これは楽しめそうだ。まぁそれは後のお楽しみにしておこう。
「昨日のことで話したいことがあるんだけど、ここじゃなんだからちょっと来てくれないかな?」
「あ、うん。いいよ」
 よし。いい調子だ。思ったよりもスムーズに事は進んでいる。
 
 僕らは体育館を出て少し行ったところにある男子トイレに向かった。歩いている最中、僕らは一言も言葉を交わさなかった。
 到着して中に入ると千秋が口を開いた。
「ここで話すの?」
「うん。でもこれじゃまだ足りないんだ」
 そう言い終えるよりも早く、僕は動き出していた。
 タックルに近い形で千秋を奥の個室へと押し込み、それと同時に鍵をかけた。あまりに急な事態に千秋は抵抗することも出来なかったようだ。
「え、ちょ、ちょっと何、何してるの!」
 大声を上げようとする千秋に対して、僕は何も言わずにその唇を奪った。
「!!!」
 壁際にぐいぐいと千秋の体を押し付けながら、それと同時に無理やり舌を捻じ込んでいく。
「むむう、むむ!」
 千秋は苦しそうな声を出しながら僕を振りほどこうとしてくるので、逆にすっと身を離してやった。
「っはぁ! ど、ど、ど、どういう」
 その言葉を遮って、極めてサディスティックな響きになるように注意して僕は言った。
「こうされたかったんだろ?」
 僕の言葉に千秋は慄然としたようだった。
「え? そ、そんな違うよ! 僕は、僕は…」
 必死に反論してはいるが、その顔はすでに上気がかっていた。
「わかるんだよ。興奮してるんだよな? 僕もだよ」
 そう言って千秋の手を取ると、自分の股間にぐりぐりと押し当てた。
「あ、あ、あ…」
「な、わかるだろ。僕は君に欲情しているんだよ。もうこんなになっちゃってるんだ」
 耳元で囁くように、ねっとりと溜めを聞かせて言う。千秋の顔はもう真っ赤になっていた。息も荒くなってきている。さぁ次のステップに移るかな。言葉責めはこんなものでいいだろう。
 僕は体勢を変えて千秋の体に後ろから組み付くようにした。
 そして抱きしめる。華奢な体に指を這わせていく。こっちの方が色々と都合がいい上、互いに息遣いや体温を感じることが出来る。
 泣きそうな声で千秋は言う。
「お願い…もう止めてよう…」
 だがそんな嘆願の言葉は、今の僕には火にガソリンを注ぐようなものだ。
 可愛い。
 千秋、君は可愛い。
 たっぷりと愛してあげるから。
 僕しか見えないようにしてあげるから。
 もう君は僕のものだ。僕の愛玩具になったのだ。
「お楽しみはこれからだよ、ねぇ千秋」
 
 初めて名前で呼べた。
 僕の妄想は、現実をも飲み込むことに成功したようだった。
 僕の中で何かが滾るのがわかる。
 熱いものがこみ上げてくるのがわかる。
 だがまだだ。それを爆発させるのは――


 この学校では女子の体育の授業は、着替えの時間を考慮してか、早めに終わるのが常である。
 体育館の地下にある柔道場から授業を終えて出てくる女子生徒たちの中に裕子がいた。
(本山田君…大丈夫かな)
 正直上手くいくかどうかはわからなかった。そして昨日の一件もあってか何か複雑な気分を裕子は感じていたのだった。
 だが、その憂鬱も一瞬にして消し飛ばされた。外に出た瞬間裕子が目にしたものは、
「虹だ!」
 裕子は思わず声を上げていた。
 なんとあれだけの雨が上がり、晴天が広がりつつあったのである。
 さらには校舎と体育館をまたぐ様に虹が架かっていたのだった。
 裕子は直感した。
 この虹が示すものを、
 この空が何を伝えようとしているのかということを、
(大丈夫。あの二人ならきっと…)
 裕子は駆け出していた。
 その瞳には何の曇りも迷いもなかった。つんのめりそうになりながらもその勢いが止まることはなかった。