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弓ちゃん、恋をする

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 弓ちゃんは歩き続けた。商店街を脇目もふらずにまっすぐとおり抜け、その先で右に折れた。左手が川になっている道で、少し行くと右手に住宅地が立ち並び始めた。人どおりが少なくなったので、星也はさらに弓ちゃんと距離をおかなければならなかった。歩いているのはほとんどが制服を着た中学生だった。星也はその制服に見覚えがあった。そうか、S中学だ、と星也は思った。星也の小学校の同級生が何人かS中学に進学していた。このあたりにS中学があるんだ。
 そして弓ちゃんの目的地もどうやらそのS中学であったらしかった。五分ばかりその道を行くと、正面に中学校が見えてきた。校門から出てくる生徒がちらほらいた。きっと運動部の生徒がこの時間まで残って練習していたのだろう。弓ちゃんは校門の前まで行くとそこで足をとめ、じっと校庭のほうを見つめた。星也は弓ちゃんが歩を止めたのにあわせて立ち止まった。近くに自転車置場があったので、そこにしゃがみこんで様子を見ることにした。弓ちゃんはS中学に何をしに来たんだろう?
 しばらく時間が経った。弓ちゃんはそのまま校門の前で校庭のほうを見て立っていた。それから思い出したように腕時計に目をやり、時間を確かめた。星也もそれにつられるようにして自分の腕時計を見た。五時五〇分を少しまわったところだった。弓ちゃんはくるりとこちらを向き、校門を背にしてそこに座り込んだ。一瞬、星也は弓ちゃんに見つかるのではないかと心配したが、そもそもの最初から弓ちゃんはまわりのものごとにまったく注意をはらっていないようだった。星也と弓ちゃんとは二〇メートルくらい離れていた。ここからでは弓ちゃんの表情までは読み取れなかったけれど、さすがにこれ以上近づくのはまずいだろうと星也は思った。そしてそのまま自転車の陰にしゃがみこんで、何かが起こるのを待った。きっと弓ちゃんは誰かを待っているんだろうな、と星也は思った。校門の前で待ち合わせをしているのかもしれない。でもおかしい。高校生の弓ちゃんが、中学生と待ち合わせたりするわけがない。
作品名:弓ちゃん、恋をする 作家名:おいら