絶対不足浪漫譚
ニ、俺には睡眠が足りない
四十八時間を超えたところで、どうにも頭も体も限界だった。二十時間近く眠らずに、締め切り三分前にレポートを仕上げたのは上出来だった。その後、休む間も無く参加したサークルの飲み会でも、しっかりと笑いを取れたのは上々だ。でも、その後に延々と宇宙が出来た仕組みについて語り明かす必要はあっただろうか? そもそも、何故俺だけが罰ゲームで歩いて十キロ先の海岸で好きな女の子の名前を砂浜に大きく書いて帰ってこなければならないんだ。そもそも何の罰ゲームなのかが思い出せない。しかも、見物人もいないなんてただのイヂメではアリマセンカ……!
しかし、俺の数少ない長所はこの愚直さにあるのだと、かつてこの俺を、告白した三秒後に振った女の子は言いました。やべ、涙出そう。
でも、もう限界だ。眠い。寝よう。身を投げ出した砂浜には、最近気になっているゼミの女の子の名前が書いてある。我ながら何故ここまでやったのかわからないけれど、全長五十メートル程の超大作になっていて、ヘリコプターでもなければ読めない。そもそもどうやって書いたんだろうか自分は。イマイチ記憶が定かではない。天才か俺は? 何となくナスカが関わっている気がする。寝そべって見上げた空からは、徐々に星たちが姿を消していく。世界が起き出す前に、眠りについておこう。目を閉じた瞬間、あの娘の顔が思い浮かんだ。と思うともう、意識は飛んでいた。