グリーンオイルストーリー空の少年たち3
「ジルも全寮制の学校に進学するっていうのなら、行きたいわ。いえ、そうでないと、わたしの勉強は進まないわ。」
「僕は全寮制なんて、いけないよ。プラーナなら、大丈夫。理系が得意なんだから、中等科から、専制で勉強すればいいじゃないか。」
「ジルがいないなんて、つまんない。全寮制いって、ドックから離れちゃえばいいのに。思う存分、理系の勉強ができて、将来は博士になれるとおもうんだけどな、ジルなら。」
「博士になるなんて、ドックにいてるのと一緒だよ。研究室にとじこもったままでさ。空が飛べるだけ、ドックのほうがましかな。」
ふたりは机のうえで顔を近づけてひそひそと会話をしていた。
レインは、ある本棚をみつけると、立ち止まり、隅から、目当てのものを探し始めた。
見つけて取り出した本をその場でぱらぱらとめくり始めた。
目に留まったページには、黒い機体の小型機。
ホーネットクルーという、皇帝専属偵察機部隊。
国の第一研究機関で仕上げられた小型機を導入する部隊で、最新鋭の機体が操縦できるところである。
しかしながら、この部隊は、5年前に解散になっていた。
授業を終えると、レインは駐車場でエアバイクのタンクに水を注いでいた。
相変わらず、コリンにはへばりつかれていた。
燃料用のタンクと培養用のタンクがあって、培養用のタンクに水を注ぎ、グリーンオイルの増量をはかる。
空を見上げて、曇っている様子をみていた。
「太陽光が足りないのかなぁ。」
「レイニー、このまま、どこかへ遊びに行かないか。俺の家に来るとかさ。」
「いやだ。」
「即答か。」
「ジルをおいていくつもりはないよ。」
「ジルが一緒なら、いいわけ?」
レインはジルがコリンを嫌っていることを知っていた。
露骨にジルを邪魔者扱いするからだった。
「コリン、いいわけないだろう。コリンはジルに冷たいじゃないか、一緒に行かないよ。」
「だよなぁ。」
コリンは時計をみて、思い出したかのように、用事があるといって、レインにさよならをして去っていった。
レインはコリンからようやく開放されたと同時に、手をとめて、地面に座りこんだ。
座ると尻のポケットに硬いものを感じ、ポケットからそれを取り出した。
方位磁針だった。
それを手にとって、思い出していた。
作品名:グリーンオイルストーリー空の少年たち3 作家名:久川智