グリーンオイルストーリー空の少年たち3
「今すぐ、出るよ。朝ごはんは途中で食べる。」
ベッドの下に机、ユニットタイプ。部屋は狭く、楕円形の窓があるだけ。
それはまるで船の個室のようだった。
食堂を二人がかけぬけると、エプロンをつけて、朝食の用意をするキャスが二人をみつけて声をかけた。
「だめだめだめだよぉ。ちゃんと朝食たべてちょうだい。」
ジリアンが食堂のキッチンに入り、袋を手に、朝食と思われるサンドイッチを詰め合わせる。
レインは、ジューサーを手に取ると、ジュースをボトルに入れる。
手っ取り早く二人は朝食をつめると、キャスは二人に抱きついた。
「ママに、朝の挨拶してくれないのかしら。」
「気持ち悪いから、やめてくれよ、キャス。」
そういいながらキャスにほっぺを寄せるレインと、何事にも動じないでやってのけるジリアンだった。
「行って来ます。」
そういって、二人は元気よく、食堂を出て行った。
スタンドフィールド・ドックの第一デッキに、リュックを背負うレインとジリアンがあらわれると、二人はそこに置かれたパラグライダーを左右からつかんだ。
パラグライダーの取っ手を掴み、デッキを走りこみ、デッキの先端で勢いよくけって、飛び込んだ。
岩山の上部から、パラグライダーでヴィエントフレスコ滝壷の脇まで降り立つ。
そこから、地下部にある建物からジリアンはエアバイクを出してきた。
ジリアンがバイクを出す間に、レインは朝食を食べてしまい、エアバイクを運転する。
後ろにのったジリアンが、バイクの移動の間に朝食を食べる。
ヴェンディシオン川から分流するオホス川の水面を渡る。
彼らが向かっているのは、週3日に通う学校。
ヴィエントフレスコ滝の反対側がリゾート地で都市部ではあるものの、レインたちが住む居住区は農業と工業地帯が広がっていて、自営業をする世帯が多い。
家業を手伝う子供たちが多くいるため、週3日の登校ということだが、高校や大学に進学を希望するものは、初等科から全寮制の学校に行くのが一般的だった。
学校に到着すると、エアバイクを指定の場所に止めて、ジリアンは初等科へ、レインは中等科の棟へ向かう。
レインが棟の入り口を抜けると、後ろから抱きつく少年がいた。
「レインちゃん、おはよう。今日もなんだかきれいだね。」
「やめろって、コリン。僕は女の子じゃないんだから。」
作品名:グリーンオイルストーリー空の少年たち3 作家名:久川智